熱に羽化されて

好きすぎてこじらせたうわ言や思考の整理など

反撃の狼煙が上がる(映画『スプリット』感想※ネタバレあり)

ティーチイン

初見はありがたくもジャパンプレミアのチケットを自力で購入して見てきたので、M・ナイト・シャマラン監督と主演のジェームズ・マカヴォイのティーチインつきだった。
参加できてとても良かった。シャマランが真摯でかわいいのと、マカヴォイの気の利かせ方がとにかく凄かった。
既に散々語られているけれど、マカヴォイが写真撮影が禁止だった会場で撮影OKにしてくれた瞬間は素晴らしかった。

「僕達がセルフィを撮る時、君たちもフラッシュを焚いて参加してくれないかな?そうすると星空みたいになって素敵なんだよ…もちろん君たちも写真を撮ってくれて構わないよ」みたいなこと言って会場が写真OKにしてくれたのも、実際に撮った写真が本当に光に溢れてて素晴らしかったのも、とても心に残っている。恐ろしいまでにスマートな人だ。

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(しかし突然の撮影OKのため、遠距離だとまったくピントが合ってくれない私の携帯Xperia XZではこれが限界だった…無念…)

 


さてティーチインの話はここまでにして、映画本編の話へ。
今回は初っ端からネタバレかっ飛ばしてるので、見たくない方はここで戻ってほしい。

 

 

 

あらすじ

女子高生のケイシーは、渋々参加した誕生日パーティーの帰りに、同級生の女の子2人と謎の男に誘拐される。
目を覚ますと3人は見知らぬ場所に監禁されていた。
誘拐した男と話をする別の人物に助けを求めた所、同じ人物に見える男がまったく異なる服装、喋り方で話しかけてきた。彼は多重人格者であることに気づく三人。
どうにかして逃げ出そうとするが……

 

感想

ひっっっっさびさに予習をしないことを後悔した。
今までシャマラン監督作を殆ど観てこなかったせいで、ラストのブルース・ウィリスにぽかんとしてしまったのだ。
予習しといた方がいいよ、と言われなくても観とけば良かったよ、本当に。そもそもネット上では配慮して誰も言ってなかったけど。(その配慮はとてもありがたかった)
でも知らなかったからと言って『スプリット』はつまらなかったのか?と問われたら、それは違う。めちゃくちゃ面白かった。例えば、予告を一切見ていなかったので、どうやって誘拐されるのとか全然知らなかった。だから、始めのシーンからとても緊張かつ集中して観られたことも幸いだった。
観終わってから、これは救済の話だと最初は思った。けれど、後日『アンブレイカブル』を観た上で、もう一度観に行って意見が変わった。これは「反撃」の物語であるということだ。

 

『スプリット』は23の人格の一人、デニスが三人を誘拐する所から始まる。相手は無作為に選んでいるわけではない。
後をつけ回すことは以前にやっていたとヘドウィグが言っていたが、実際に誘拐したのは恐らく初めてだ。以前にもやっていたなら、それこそ“群れ”と呼ばれている三人以外の人格が、医師に同じようなヘルプメールを出しているだろう。
作中で女子高生2人がわざとケヴィンの手を掴んで胸に当てさせた、という話をしているが、それがケイシーを除く誘拐した女の子たちだ。
彼女たちと接触があった時、ケヴィンの人格が誰だったかは分からない。彼女たちにとっては度胸試し、遊びの延長だったかもしれいないが、しかし彼にとってその行動は衝撃的だったろうし、れっきとしたセクシャル・ハラスメントである。その混乱の最中に、ヘドウィグが何らかの方法で「照明」を奪うことができたのだろうと推測される。そこから、元々人格たちの中でも疎まれていたパトリシアとデニスが台頭し、反撃に出るのだ。彼ら3人の“群れ”と“ビースト”によって。


そもそも分裂した人格たちは、主格であるケヴィンを虐待や外部から守ろうとするために生まれてきた。親からの虐待から逃げられなかった彼は、人格を引き裂くことしか出来なかった。それがいつしか超人的な人格である“ビースト”を生み出してしまった。
元々DIDが「患者」として扱われ、普通の人に比べて下に見られてたから「我々は人類よりもすごい存在なのだ」と世界に対して宣言をすることが“群れ”の目標になったのではないだろうか。ヘドウィグが何度も「見返してやる」と言っていたのが印象的だった。
それがこのセクハラ事件によって群れたちは“ビースト”を求め、迎えるための準備を始める。

 

ケヴィン・ウィグラム・クラムと彼の有する23の人格達を演じたのはジェームズ・マカヴォイ。私は以前からこの人のことを世界でトップクラスに演技が上手い人だと思っていたのだけれど、今回も遺憾なくその才能を発揮していた。実際演じていたのは24人格全てではなく、その三分の一である8人分だったが。ただ、バリーに化けているデニスという難役さえやっているので、9人とカウントしてもいいかもしれない。この人数が一本の映画で演じられる限界なんだろうか、と思いつつ、今後24人全員演じて欲しい。それくらい素晴らしかった。特にワンショットで人格が目まぐるしく変わっていくシーン、あれは本当に凄かった。喋り方と表情と動きでまったく違う人物が瞬時に浮かび上がってくる。本人の負担は凄いだろうけれど、ずっと観ていたくなる。

 

ここでもう一人の主人公、ケイシーについて話したい。演じているアニャ・テイラー=ジョイも凄い。僅かな、でも確かに滲んでくる強さの演技は圧巻だった。これからとてつもない女優になっていくと思う。

誘拐に巻き込まれた彼女は、他の二人と親しいわけではない。拉致されてからも、進んで協力しない。試行錯誤する二人のことを「無駄」と言い、デニスの掃除をしろなどの要求に、最初に従う。かと思えば、少女の一人が連れて行かれそうになった時「おしっこしちゃえ」という思いつかないようなアドバイスをする。
これは彼女が他の二人と比べて単に頭が良いからなのかなって最初は思っていたけれど、映画が進んでいく内にそれだけではないことが分かる。

挿入される父と叔父との幼少期の思い出。ケイシーが多重人格者の男に立ち向かえるだけの優秀な狩人であるという暗示かと思いきや、叔父に(恐らく性的な)虐待をされていたことが分かる。だから逆らっても無駄だし、刺激したくない。他の子が逃げ道を探そうとしてる時にしない。そして現実にいない時には、悪夢にうなされている。
ただ、実際彼女は優秀な狩人の素質はある。ケイシーは叔父に言うことを聞かされていたのと同じ手段で、今度は自分より弱いヘドウィグに対して攻撃に出る。
叔父がケイシーに言うことを聞かせようとして「お父さんに悪い子だって言うぞ」というような言い方をする。自分にとって絶対の存在にお前のことを脅かすぞ、と。そしてケイシーは「デニスとパトリシアが、本当は私達じゃなくて貴方のことを差し出すつもりなのよ」とヘドウィグに言うのだ。
他にも「内緒なんだけど」「あなたにはこっそり」とか、9歳の男の子が聞いたらくすぐられるようなワードを使うし、信じてる大人が本当は悪い人なのよ、みたいな言い方は子供にとって絶大な効果発揮するから、うまくいきそうになる。この辺りの彼女の駆け引きは引き込まれるし面白い。面白いと思うと同時に、彼女の遭ってきた境遇を考えて、やりきれなくなる。
最初観た時はケイシーの行動が腑に落ちない部分があったのだけれど、もう一度観ると、彼女の動きがものすごく説得力があることに気づいて震え上がった。僅かな視線の動きや、観念めいた表情も、理由が分かる。

 

そんなケイシーとビーストは最後に邂逅を迎える。狩る者と狩られる者だった二人は、ビーストがケイシーの身体に残る傷跡に気づいたことで、状況が一変する。
それは「虐げられていた者」同士の出会いだ。
ビーストというのはケヴィンを守るために生まれた人智を超えた存在だが、彼にとってはケイシーもまたケヴィンと同じ。だから彼は殺さなかった。 そして「喜べ」と言う。お前は他の者達とは違うと。生きていていいのだと。あれはビーストによる、ケイシーへの福音だった。
学校にも家にも居場所などない、望んで孤立していた彼女は、思いもよらない仲間を発見する。
涙を流すケイシーは、襲われなくなったことにホッとしているようにも見えるし、解放されたようにも見える。それはあの拉致監禁の状況もそうだが、今まで彼女を縛り付けていた虐待のことさえ、何か解放されたような気がしてしまう。

 

そして祝福を受けたケイシーは、今一度戦うことを思い出す。彼女はラスト、「叔父さんの迎えが来たよ」という警官に対して返事をせず、強く睨みつけるだけで終わっている。この後のことは描かれていない。彼女がどういう行動を取ったかは分からないけれど、叔父に対してただなすがままではないであろうことが予想される。これは彼女一人で立ち向かうかもしれないし、この警官に叔父がしてきたことを洗いざらいぶちまけて、保護されることになるのかもしれない。でも彼女はもう戦うことを諦めるという選択肢は、もうないのだろう。ケイシーはもう戦えるのだ。反撃の狼煙は、あの時に上がったのだ。決意の現れは、彼女の目が雄弁に語っている。

 

どうしようもない状況に陥った状態の人に、誰かが手を差し伸べる瞬間が物凄く好きなので、ビーストとの邂逅のシーンは、初回はとても混乱し、私はもう危機が去ったことへの安堵と興奮でめちゃくちゃになって、わけも分からずに泣いてしまった。もしかしたらケイシーも同じだったかもしれない(全然違うかもしれない)
色んな箇所で、この映画はX-MENを想起させる。分かり合える同じ立場の誰かと巡り会える瞬間や、超能力を持ち得ているかもしれない人間を越えた人間の研究などだ。また、ジェームズ・マカヴォイX-MENシリーズでプロフェッサーXを演じているし、今度アニャもX-MENの映画に出演が決定している。
また、精神科医であるフレッチャー医師の「ボルチモアの同僚」というところと、狩りをする父親と娘、奇妙な出会いをした二人のシンパシー、という辺りではドラマ版の『ハンニバル』のシーズン1も少し思い出した。が、こちらはまだ完走していないので印象が変わるかもしれない。

 

 

ところで面白いのはケイシーとビーストは、似たような境遇である一方で、相容れないであろうということ。
「不純な若者を食べる」というビーストは間違いなく犯罪行為である一方、ケイシーは今のところ犯罪行為はしていない(ビーストに銃を向けたのは正当防衛だろう)
また、彼女は分裂していない。ここで、ケイシーとビーストの道も分裂したのだと思う。
だからこそケヴィンはヴィランになり、ケイシーは恐らくそうはならない。
本当は、ケヴィンだっていっぱいいっぱいの筈なのだ。例えばデニスは、ケヴィンが3歳の時に生まれたと主張している。言われたことを「完璧」にこなそうとする必要があると感じた彼は、その通りにした。結果として、デニスは強迫性傷害を持っている。「完璧」でないと気持ち悪いのだ。

 

また、ジェームズ・マカヴォイによると“ビースト”はチーム・ケヴィン(いわゆる彼の人格達)の応援団長らしい。*1
そんな彼は殺人を犯しているが、どうも完全悪としては描かれていないように感じた。人間ではなく、高次元の存在として描かれていたからかもしれない。彼にとって捕食は生命活動の一環なのかもしれない。謎は深まっていく。

 

 

 

そしてこの物語は『アンブレイカブル』の続編ということが、ラストで明かされる。
ここで数々のただのシーンとして観ていたいくつものカットが、何か前作との繋がりがあるのではないかと思わせる。
特に印象的なのがビーストが生まれる場所である。彼は電車の中で覚醒する。『アンブレイカブル』も、電車のシーンから始まる。ここで『アンブレイカブル』の主人公であるダンは、自分が他の人とは違うことにはっきりと気づく。
電車に乗って、帰っては来なかったケヴィンの父親。もしかしたら、パトリシアが花を買って電車に供えたのは、父親もあのアンブレイカブルで起きた事故の犠牲者である可能性もある。

 

 

そして『スプリット』は『Glass』という新しい作品へと続いていくことも知らされる。
ここに私は、シャマランもまた反撃に出たのだと思う。同じ世界観を共有している複数の映画作品は、MCUシリーズをはじめDCEUシリーズとか、FOXマーベルユニバースとか、あとユニバーサル・モンスターズとか(これは違うか?)、色々出てきている。そこに15年の時を経て、シャマランが一人で乗り込んできたのだと思う。
『スプリット』の前身である『アンブレイカブル』もまたアメコミに大きく影響を受けている。また、Mr.Glassを演じているのは、アベンジャーズでフューリー長官を演じているサミュエル・L・ジャクソンというのも面白い。世界を救う組織の長だった彼が、悪役として再登場する。
この続編がどういう形で私達の前に現れるのかは分からない。分からないが、ダン(ブルース・ウィリス)も、Mr.Glassも、ケヴィンも、そしてケイシーも帰ってくる、とシャマランは明言している。
今一番楽しみにしている続編になった。2015年あたりから続編に期待するのはよそうと思っていた私が、今、こんなに続きを待ち望んでいる。彼女たちがどういう形で反撃してくるのか、全然予想がつかないし、恐らく簡単に驚かされてしまう。奇才、ナイト・M・シャマランの手によって。

 

 

一点、この映画の悪いところは「不純な」「若者」を食べる、と言っていること。ケイシーを[Pure(純粋)]と言い、そうでない子たちのことは[Impure(不純)]と称するのはあまりうまくないと思う。虐待をされているのは純粋な証なのか?目に現れない形であったら?
最後のビーストの宣誓とも取れる演説は、舞台がかった喋りになっていて、ジェームズ・マカヴォイが舞台で活躍しているからこその演技だったと思う。だからこそもう少しうまくできたと思うので、次回ではこの辺りが解消されていてほしい。

 

 

 

*1:ティーチインの時にそう発言していた

映画『ナイスガイズ!』を観てほしくて叫んでいたペーパー加筆修正ver.

今晩は!バレンタインデーですが明日受験の家族にチョコ渡して後は自分で食べているだけのはとです。
先日都内某所で配っていたペーパーで『ザ・コンサルタント』が良かったよねって話に合わせてとにかく『ナイスガイズ!』を観てくれという叫びを綴っていたのですが、せっかくなのでここで公開します。

 

 

1月から最高な映画『ザ・コンサルタント』を観てほくほくするも、もうそろそろ上映が終了してしまう…何か2月は面白い映画がないかな…とお探しの貴方におすすめしたいのがこちら!
来週2月18日(土)公開の『ナイスガイズ!』です。ぶっちゃけ共通点は萌えて面白いことしかないけど、まずはちょっとばかりこちらを読んで欲しい。こんなペーパー作るくらい萌えた。もしもう観るつもりであんまり情報入れるつもり無いよ、という方は読み飛ばしてください。ネタバレはあんまりないと思います。

f:id:ibara810:20170214232557j:plain本国版のポスター。日本版はピンクっぽいですが、こちらはオレンジ基調。
この二人が思わず萌えるんですよ……



舞台は1977年のLA。うだつのあがらない私立探偵のマーチは、ひょんなことから全てを拳で解決する切れ者の示談屋ヒーリーとコンビを組んで行方不明の女性を探す事件に取り掛かる。最初はただの行方不明かと思いきや、謎を追う内に大いなる陰謀が見え始め、二人もその謎に巻き込まれていく…という鉄板のクライムアクション。
しかしシリアスというよりは割とギャグ多めで軽い気持ちで観られちゃいます。ただ、ブロマンスが唐突にぶっこまれるので侮れません。しかもここにマーチの娘、ホーリーが加わることによって、疑似家族要素も楽しめます。一粒で二度美味しい!ちなみに彼女は父親よりもずっとしっかり者で賢いぞ!スパイダーマンにも出るぞ!演じているのはアンゴーリー・ライスちゃん。今作のヒロインです。

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スパイダーマン:ホームカミング』以外にもソフィア・コッポラがリメイクした『白い肌の異常の夜』(原題:THE BEGUILED)にも出演が決まってます。ニコール・キッドマンエル・ファニングキルステン・ダンストコリン・ファレル共演だよ!

 

彼女の父親でもある私立探偵のマーチをライアン・ゴズリングが演じています。
あれ、ライアン・ゴズリング? 最近この名前『ラ・ラ・ランド』で聞いたことあるぞ?
というそこの貴方正解です。あちらではイケメンのジャズピアニストを演じていますが、こちらではドジっ子属性MAXの抜けている、でもふとした瞬間に推理が出来なくもない、私立探偵になっています。
これがまた可愛いんだ。髭をもしゃもしゃしたい。そして終始大丈夫!?ってこちらをはらはらさせる感じ…ずるい…

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示談屋のヒーリー演じるはラッセル・クロウ。OGの歌ウマおじさんの一人ですね。
今作ではくまのような見た目で敵をボコボコに殴っていく!すぐ殴る!徹底的に殴る!
示談屋という肩書ですが基本的に暴力で解決していきます。
しかし時折とってもキュートでチャーミングな一面もみせてくれます。こちらもとってもかわいい。ずるい。
こんなにラッセル・クロウに萌えるとは思わなかった。

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ヒーリーとマーチは最悪の出会いから始まるのに、なんだか気づいたら良いコンビになります。頭もいいし腕っ節も強くて、一人でもやっていけるのに相棒を作っちゃって世話を焼いちゃうくまおじさん×男やもめ娘持ちドジっ子属性時折ヒラメキ型気だるけお兄さんってどうですか?萌えませんか?世話焼き×ドジっ子ってお前それ『キスキス,バンバン』じゃないか!と思った貴方も正解です。なぜなら監督が同じシェーン・ブラックだから。『アイアンマン3』の監督なども務める彼は男バディ作品とクライムアクションが大得意。今度プレデター撮るよ。ちなみに『アイアンマン3』で見たことある人がカメオ出演しています。

 

 

 

なんだか少し気になってきた、という方はあんまり予告は眺めずに、映画館にgoしちゃった方が良いかもしれません。
肩の力を抜いて楽に楽しんでください。そして気が緩んだ瞬間に萌えにぶん殴られてください。あと敵役として、マグニフィセント・セブンより長くマット・ボマーが出演しています。しかも黒の革手袋をつけて。これだけでも最高じゃろ?

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これ、ちょっとナポレオン・ソロみありません?

 

どうしても興味が出ない?
それなら2月21日ヒューマントラストシネマ渋谷で公開の『バッドガイズ!!』はいかが?悪徳刑事のバディものです。今をときめくマイケル・ペーニャアレクサンダー・スカルスガルドのW主演だよ!
このヒュートラ渋谷では『ナイスガイズ!』と『バッド・ガイズ!!』のコラボキャンペーンをやっていて、どちらも観るとここでしかもらえないポストカードがもらえるそうですよ。皆是非よろしくね。

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ちなみにこちら、邦題は『バッドガイズ!!』だが、原題は『War on everyone』である。
ナイスガイズ!に乗っかる気満々である。

 


それもあんまりピンと来ないという方は『ザ・コンサルタント』のギャビン・オコナー監督の前作『ウォーリアー』をレンタルするかAmazonプライムで観てください。こちらはド直球に兄弟ものです。

 

ウォーリアー(字幕版)
 

 



ここまで読んでくれてありがとうございます。
『ナイスガイズ!』と『ザ・コンサルタント』よろしくね!
あともし『キスキス,バンバン~L.A.的殺人事件』観たことない人がいたらこちらもよろしくお願いします。
ロバート・ダウニー・Jrがめちゃくちゃかわいくてヴァル・キルマーとめちゃくちゃブロマンスしてます。

 

 

一年越しの再会

普段とはあんまり違う話をしますけど深夜なので許して欲しい。いや元々好きなものを書き散らすだけのブログなので誰かに許される必要は特にないんですけど。

https://www.instagram.com/p/BPkrrUnDIsM/
ふふふ。着れるようになったのでおめでとうの気持をこめて。(去年太ってまったく入らなくなってた)


このとてつもなく写真写りが悪くてまったく色がぼけて見えるこの萌葱のスカート、一昨年の冬の終わりくらいに一目惚れ。即決で購入して、以来お気に入りの一着だった。
しかし買った段階でサイズぴったり、もっと言えばごはんを満腹になるまで食べたらファスナーおろしたい…という有様だったので、半日くらいのご飯を伴わない遊びの時にちょいちょい着ているに留まっていた。
そうしたら昨冬は一昨年に比べると動く量が減っていたのか、自分の人生の中で体重が最高記録を叩き出していた。
そのお陰で、随分と入らなくなった服が増えた。このスカートもまさにそんな一着になってしまった。ファスナーを無理やり上げて、ギリギリ入るけどこれで出かけるなんて考えられない。お気に入りなのに結局一度もはいて出かけられないまま、冬が終わった。2016年は、結局一度も着てあげられなかった。
今年もそんな調子ならお別れしなければならないな…と思っていたけど、なんだかもう試すのも怖くてずーっとクローゼットにかけっぱなしにしていた。
でも最近、腹筋したりしててなんだか体が軽くって、お腹周りが心なしかすっきりしていたので、試しに履いてみた。履けた。なんならセーターをスカートにインすることも出来た。なかなかの衝撃だった。履くと生地がしっかりしているので重たかったことを思い出した。でもこの重さはあたたかさに直結していて、だから好きだったのも思い出した。やったね。へへ。


ダイエットが成功したいえーい!というよりは、単純に好きな服が着れて嬉しい。ダイエットというほどのことはそもそもしていない。好きなもの好きなだけ食べるし。ただ全然運動していないのと、日常生活に支障が出るレベルに筋肉がないから筋肉が欲しい、というだけで筋トレをしたり歩いたりしている程度だ。
だから去年太って着れる服が半減したのが本当にストレスが溜まっていた。
そもそも洋服を選んだりするのがとても苦手で、組み合わせとか毎日軽く発狂しながら考えているのだけれど衣服は嫌いじゃない、むしろ好きだ。お気に入りの服だってあるし、おしゃれだってしたい。
もしかしたら、2017年はそういうことももう少し出来るんじゃないかな、という気持ちに今なっている。だから記録として書こうと思った。
書かないとどんどん忘れるし、私はすぐに書くことをサボるから、結局何にも記憶に残らない気がしてしまったから。


また着れた!というのがすごく嬉しくて、そのまま今一番好きだと思っている人に会いに行った。相手は私の服装など見ていなかったと思うけど、一番かわいいと思っている服で会えたので良かった。ただそれだけの話です。

2016年映画ベスト(作品部門)

あけましておめでとうございます。
昨年漸く動かし始めたブログではありましたが、月に一度以下の更新率という超低速を記録しています。
今年はせめて月に一本以上書けたらいいな、ということを目標にしていきたいと思います。

 

映画界隈としては、本日はゴールデングローブ賞の発表があったと思いますが、まだ結果を観ていません。
司会が私の愛するジミー・ファロンだったので、授賞式を完全版で観るまでは、お預けにしようと思っています。
そのため、私がGG賞を観るまではTwitterも開かないつもりです。

だからと言っちゃあなんですが、まだ出していなかった去年の映画ベストを出したいと思います。
別に出さなくてもいいんですけど、単に私が好きだ!ということを連ねるだけですので。

 

 新作編

1位:レヴェナント 蘇りし者

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やっぱりこれが今年の一番です。
艶めかしいほどに美しく撮られた、押し寄せてくる雪や水などの圧倒的な自然の中で、迸る生命の火に人間を観た。
ぞっとするほどの息遣い、雪山の凍るような空気、画面の隅々まで生命力で満ち溢れていた。
劇場で観たのにこんなに後悔した作品もなかった。極上の環境で何度でも観たい、と思ってしまったのに、後の祭りだった。THXも爆音上映もやってたのに全て見逃したことを未だに悔やんでいる。
駆け込みでIMAX上映に行けたのが救いだったけれど、どうして初日に行かなかったんだよ本当。
映像も音楽も復讐譚としても人間を描いた作品としてもこんなにも観客を呆然とさせて殺しにかかってくる映画早々お目にかかれません。というわけでこれが一番。

 

 

2位:ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

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観終わって今年ベストでは!?と叫んで色々調べてしまったのが良くなかった。どうしても引っかかる点があって。
それでもやっぱり好きだと思い返せば返すほど、ぐっと来てしまう、そんな一作。
実はスター・ウォーズシリーズにはそんなに思い入れがなくて、本編7作は全部観ているし割と好きだが「これが人生だ!」とかとても言えない。でもこれは一本の映画としても、スター・ウォーズサーガの一遍としても素晴らしかった。よっぽど父の方がスター・ウォーザーだったのに、そのへんはまったく娘に教育してこなかったとか、まあその辺りは別の話。
フォースが使えなくても、互いをろくに知らなくても、相手が絶望的に兄弟でも、同じ目的のために、何度も何度も、諦めずに小さなことでも進み続けていく。そうすることで紡がれる希望が途絶えずに、次の世代へ繋がっていく。細い糸のように頼りなくても、誰かが受け取れば、きっと希望は大きく花開く。
ジンが反乱軍の前で語るシーンと、貨物船に乗り込んでからのシーンは全部好き。
あとマッツ・ミケルセンがズルすぎてなんかもう出てきたら延々と泣いてしまった。

3位:シング・ストリート 未来へのうた

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間違いなく今年の一本であり、生涯の一本にもなった。
2016年、めちゃくちゃ期待値を上げて、その期待値を更に上回っていったのはこれ一本だけかもしれない。
高校生が自分の殻を打ち破って思い切り駆け抜ける、原石のような輝きがキラキラとぶつかり合って奏でてる音楽が爽やかで胸に来てどうしようもなく泣けてきた。
登場人物が誰も彼も愛おしすぎて仕方なかったのだけれども、あまりにも自分が主人公の兄であるブレンダンと重なってしまって、それでものすごく泣いていたのも事実。刺さった、あのキャラ、今年一番感情移入した…
劇中歌の「Drive It Like You Stole It」と、流れるシーンは、間違いなく今年一番の傑作。

 

 


4位:プリースト 悪魔を葬る者

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まさかこんなに好きになるとは思っていなかった。
私が今年観たかった、本物のヒーローはこの映画にいました。
孤独なヒーローが世界の誰からも認められていなくても、自分のやるべきことを全うしようとする様にぐっときたし、唯一知る青年は逃げ出した過去を乗り越えて、今度は逃げない選択をして隣に立つ…こんな最高のバディでヒーロー、他に知らない。
いきなりイタリア語から始まり、韓国映画カトリック?と最初馴染みのない世界に驚いたのですが、これがうまく現代の中に溶け込んでいて悪魔祓いという話が物凄く上手に現実と重なっていた。

 

 

5位:スター・トレックBEYOND

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 ローグ・ワンが過去から手渡されたバトンだとしたら、今作が過去を引き継いで生み出した未来の理想郷の一つだ。
シリーズ当初では子供だったキャプテンが、大人ならではの責任感や、苦悩していた姿にクリス・パインの演じ方がどんどん良くなってきたなあと感慨深くなっていた。けれど決してシリアスになりすぎず、軽やかにアクションやコミカルさも含めて描いているの、本当に大好き!
ヨークタウンのシーンでは、音楽と人々の生活の営みに「こんな未来があればいいのに」といつも泣いてしまう。
クルーたちの掛け合いがよくて、特に全員でポンポンと自分たちの知恵を掛け合って一つの結論に結びつき、ぶちかますシーンは最高でした。自分の力量と仕事をきっちりとこなす、格好いい大人たちの映画だった。
このメンバーが最高。最高だから、次の話は考えたくない。

 

 

6位:ベストセラー 編集者パーキンスに捧ぐ

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 出会うべくして出会った、編集者と作家という二人の男の友情であり仕事であり人生の作品。
こちらも仕事映画であるし、その道のプロ故ののめり込み方だけど、仕事を超えて人生の全てを投げ打ってでも燃える情熱にこちらまで焦がされそうだった。
目に見える形の激しさを作家トマス・ウルフが、端から観れば冷静なのにその実胸の内に秘める情熱は誰よりも強い編集者マックス・パーキンスが、それぞれ正反対に互いに必要としている様は美しいとしか言いようがなかった。
ラストまで観て、この映画と二人の“完璧”さに打ちひしがれた。ラストは泣いて泣いて泣いて、打ち寄せる波に呆然とする他なかった。

 

7位:10クローバーフィールド・レーン

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クローバーフィールド/HAKAISHA』の続編なのだが、何なら前作を観ないでこの作品を観た方が面白いと思う。
それくらい何も知らないで観るのが良いと思います。
観ている間、ずっと息を止めたり、飲んだり、大変ドキドキする映画です。
そしてダクトテープはいつだって最高、というダクトテープ映画でもある。
こんなに力強くて面白い作品になるとは思わなかった。主人公が格好良くて、ああなりたいと思う。

 

 

 

8位:クリード チャンプを継ぐ男

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去年の正月に観た映画だったので人によっては2015年の映画だとは思うのだけれど、まあ最高としか言いようがないスタートを切れたのはこの映画のお陰。過去があるからこそ今がある。
人の思いは繋げよう、と思わないと繋がらない。でも思いがあれば繋がっていく。そして立ち上がって、挑戦し続けるのも自分の意志。ああー格好いい、ひたすら格好いい。序盤の、プロジェクターでYoutubeの映像に自分を重ね合わせたアドニスに、もうあれだけで持って行かれた。

  

 

9位:キャロル

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雰囲気も衣装も二人も大好き。出会いも逃避行も刹那的なようで、しかしそれが人生において大事な瞬間がいくつも重なっていく。何もかもが渾身の写真のアルバムのようで、そこに入った傷さえも愛おしかった。

女性同士ということを除けば、なんてことない話かもしれない。しかしそのなんてことない二人の恋愛が、愛おしくて大好きだった。それに、それでも1950年代の二人があのラストを選んでくれたことが私にとっての福音だった。
何度も繰り返し繰り返し観ては、「好き…」と溜め息を吐きたい、そんな感じ。

 

キャロル [Blu-ray]

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10位:バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生

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こんなに面白いとは思わなかった作品第一位かもしれない。
なぜなら私とザック・スナイダー監督はまっっったくもって肌が合わない。
序盤のケレン味と格好良さは相変わらず、しかし面白さが全く失速しないまま終わってしまったので、本当に私は今この映画を観ていたのか分からなくなった。前作の『マン・オブ・スティール』は嫌いじゃない、が、もうちょっと色々どうにかしてくれ、と思っていた。
特にベン・アフレックバットマンがこんなに良くなるとは思っていなくって、ずっと心がブルースに寄り添ったままだった。だからこそ、最後の二人が理解し合うシーンがぐっとくる。
ヴィランレックス・ルーサーもとても良かった。気が狂ったような喋り方と実行してしまえる、自分ですら懐柔できていなさそうな狂気が大変似合っていた。
しかし何よりワンダー・ウーマンが格好良すぎる。ワンダー・ウーマンも、ジャスティス・リーグも、とても楽しみになった。

 

 

旧作編

(劇場で観た作品のみとする)

君が生きた証(+アントンオールナイト作品)
戦場のメリークリスマス
ノスタルジア
アイム・ノット・ゼア
スーパー8
つぐない
地獄の黙示録
バトルシップ
オン・ザ・ロード
インセプション(IMAX)
X-MEN ファースト・ジェネレーション

 

映画祭編

特別賞:ネオン・デーモン(2017年公開作のため)

メコン大作戦
ネイバーズ2
ミステリアス・スキン
メン&CHICKEN
年下のカレ
リビング・デッド
愛と死の谷
グリーン・ルーム
ヴィクトリア
シェッド・スキン・パパ

 

以上2016年映画ベストでした。

全体を通して考えると、意志の強さと過去からの繋がりと、未来への展望みたいな所にぐっと来ているのかな、と思う。
2017年はどんな映画に出逢えるかな、と思っていますが、現在腰を痛めてまだ新作を一本も観れていなくて発狂しそうになっている。早く映画観たい。

魔法にかからなかった(『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』感想ネタバレあり)

ジャパンプレミアの2D字幕、その後IMAX3Dで、それから更に4DX吹替で観てきました。

まず始めに言っておきたいのですが、私は「ハリポタは人生」と言ってしまうタイプのオタクで、もともと映画など認めぬわ!というくらいの原作小説至上主義者でした。
今は映画も原作も大好きです。あんなに忠実で面白いままきちんとシリーズ最後まで終わらせたのが奇跡の作品群だと。
ちなみに現時点で『呪いの子』脚本、舞台、どちらもノータッチです。
そしてこの数年で「作品は好きだけれど、作者の価値観とは合わないな」と思っているマグルです。(とても柔らかな表現を使っています)
なので、こんな奴がなんか色々言ってると思ってください。

 

まず観終わった時に思ったのは、「原作を読まないまま『ハリー・ポッターと賢者の石』を観た人たちの感覚と同じものを味わっている」でした。今までの私は、原作を呪文や台詞やら片っ端から暗記していて、それがどれ位出てくるかとか観ているような子供(そうです第一作の当時は小学生だったのです)だったので、どんな物語になるのか、どんな場所や人たちが出てくるのか、まったく知らないままで観ているこの舞台のお話を楽しむのは初めての感覚だったのです。
これは貴重でありがたいな、と心の底から思いました。同時に、とても不思議でした。私の知らない魔法界があったんだなあって。 狂ったように読み込んで、隅から隅まで知ってるものと思い込んでいた。(大丈夫か?と自分で書いていても思いますが、終始こんな感じです。大丈夫です)
世界観は同じなのに、まるで知らない世界に迷い込んでしまって、出口がどこだか分からないまま呆然としていた、というのが一番近いかも。

ここからネタバレが入ってくると思うので、観たくない方はここでさようなら。

 

 

 

 

 

 

観終わった時に思ったもう一つのことが、これが面白いのか面白くないのか判断が出来ない…
というのが素直な感想でした。
なんだか、よくわからなかった。
感動した部分もあったし、わくわくもあったんだけど、なんか、なんだろうこれ?
私が観たかったのってこれだったっけ?

 

良かったなあ、と一番思ったのは、ジェイコブ・コワルスキーというマグル(ノー・マジ)の存在。
今まで何かしら魔法使いと関わりのあるマグルしか出てこなかったこの世界で、ちょっと関わっただけの、普通ならすぐに記憶を消されておかしくない人が、当たり前のようにあの世界に溶け込んでいたってどれだけ幸福なことなんだろう、と何度も思う。

「君は誰からも好かれるだろう」と作中でニュートが問いかけるシーンがあるけれど、まさにそう言いたくなるような善人なんだよな。聖人ではない、善人。
ニュートのトランクの中に入った時に、次々と出て来る魔法生物に対して驚きはするけど、次の瞬間には「うわー!素敵!」という反応をする。そこがとてもいい。なぜならあの世界のマグルは見慣れないものに対して、怯えて凶暴になる、という設定で話が進んでいくから。でもジェイコブはそうじゃない。
彼がこの作品で一番良かった。間違いなく、魔法使いと私達マグルを繋いでくれたキャラクターだった。

 

トランクの中、で言えばあのシーンは惚れ惚れしたくなりました。布で仕切ってあるけれど、くぐり抜けるとまったく違う気候になってたり、土地になっていたりするのは楽しい。拡張魔法があれだけ夢を見せられるのはよい。
あれに似たような気持ちは炎のゴブレッドの時の序盤のテントの中とかがまさにそれで、ちっぽけなものの中に無限の世界が広がっているのは素敵。

『幻の動物とその生息地』をあほみたいに読み込んでいたお陰で知ってる魔法生物が出て来る出て来る!
ボウトラックルもエルンペントもニフラーもデミガイズもいるー!
名前が出てなかったけどフウーパーとかディリコールもいるぞ!
ビリー・ウィグは見るたびに「フィフィ・フィズビ―(お菓子)の原料…」とか思っていました。
でも設定観て初めて気づいたんですけど、ヌンドゥがいることに気づいてのけぞりました。あの吠えると喉元がハリセンボンみたいに膨らんでるヒョウみたいなの、あれかよ…!というかヌンドゥをトランクの中で保護しているのは生物全滅する危険性ない?大丈夫?そもそもなんで先生は保護成功しているの?という疑問が沸いて未だに混乱しています(ヌンドゥは吐く息で人間の村を一つ絶滅させる威力を持つ)
(あとしょうもないことに初めてオブスキュラスを見た時、「あれレシフォールドじゃない!?」と思ったんですがレシフォールドの名前を思い出せなくてあれ?と思って一瞬勘違いしました。鑑賞後に名前調べてレシフォールドだった…違った…とがっくりしていました。レシフォールドは黒くて薄い布みたいな魔法動物で、寝ている人間にそっと覆いかぶさってそのまま食べてしまうという恐ろしい習性を持っている)

もう一人良かったキャラクターがクイニー・ゴールドスタイン。
天真爛漫で、でも人の心が読めるゆえに傷ついたことも多くあるのだろうな、という想像をさせるけど、そんなことお構いなしにこちらを魅了するキャラクターだった。
自分のことを理解していて、だからこそ機転が利いて、立ち回るのがうまかった。
すごく好きなキャラクターです。

あと、酒場のシーンが良かった…!
禁酒法ってマグルの法律だから魔法使い関係ないのでは?と思ったけど、ならず者たちが集まる酒場の雰囲気はとても良かった。
あの歌とバーテンダーと、壁に貼ってある懸賞金と、こういうハリポタではあんまり見せられなかったような、悪い大人の側面が見えるのはとてもいい。
ロン・パールマン演じるゴブリンのナーラックも、とても悪くてずるくて最高だった。
彼の出演作のパシフィック・リムと役どころが被っているような気はしたけど…

クリーデンスを演じたエズラ・ミラーはハリポタオタクであるということはもう広く知れ渡っていると思うけれど、決まった当初は、メインキャストは英国人だからアメリカ人ではなかなか出るチャンスがなかっただろうに、今回のシリーズで出れて良かったねと心の底から思っていました。是非グザヴィエ・ドランと対談して欲しい(ドランはカナダ盤フランス語吹替でロン・ウィーズリー役をずっと続けているに加えて、自身の腕にダンブルドアの台詞と顔を入れ墨に入れるくらいのハリポタオタク)

 

後はコリン・ファレルの格好良さが天元突破していた。
グレイブス長官最高!ありがとう!あの造形をコリン・ファレルでやろうと考えた人本当にありがとう!
史上最高の格好良さだった。作中で一番格好いいキャラクターでもあった。本当に惚れ惚れする。

 

映画の冒頭、始まってからのシーンがいちばん好きです。
わーっWBのロゴとヘドウィグのテーマで涙腺爆発!私今ハリポタシリーズの映画観てる!と思えたし、新聞と動く写真がイエーツのハリポタっぽい!すごい!とすごく興奮した。
そしてその興奮が冷めやらぬ内に映し出されるグリンデルバルドの後頭部カットーーー!ああーーーここ報道されてた写真のジョニデかっこいいじゃんうわーーー!
ここからニュートの旅まで移っていく、ここまでがとても好き。

 

残りは褒めていないしものすごく攻撃的になっているので、この映画が良かったなあ、と思っている人はこのままUターンした方がよいと思います。

 

 

 

 

主役のニュートとヒロインのティナが好きになれなかった…
ニュートは魔法生物の保護を目的としている割に、初っ端で孵化しそうなオカミーの卵を置いてった段階で「え、こいつ本当に動物大事にする気あるのか…?」と思ってしまって。
研究のために保護していて、愛情が行き過ぎている…というのはまだいいけれど、スウィーピング・イービルなんかは完全に便利だから使役してたように見えた。
ピケットをナーラックに渡す時も、きっと彼はこの後ピケットを救いに戻るのだろうけれど、その対策のようなことや算段がまったく取れていなかったので、これで別れたらそれはそれなんだろうな、という感じに耐えられなかった…
序盤のどんなに人に迷惑をかけたとしても動物は悪くない!という態度はまあ百歩譲って動物のせいでないとしても、その地域にいない生物持ち込んだお前が悪いのでは…?という気にもなってしまった…
ハグリッドと似ているなあ(年代的にはハグリッドがニュートに似ているなあ、だったと思うけど)というのが最初の印象として強かった…もっとねちねちこいつの性質はねーって調べるのが好きな学者っぽいイメージだったのが良くなかったのだろう、と思う。

あと中盤でテセウスという兄の話が出てきたけど、出来のいい兄とそんなに良くないはみ出し者の弟の話ってハリポタでも繰り返し繰り返しやってたけどまだやるの?JKRの好きなテーマだとは思うけど…

兄と弟、の話で言えばマグルの新聞社の息子たちマグルもそうでしたね。多分次回作出てこないんだろうけど何か兄に比べて弟は劣等感を抱かなきゃいけない法則でもあるのか?もうお腹いっぱいだよ!なんであんなモブまでに中途半端な物語もたせようとするんだよ!結局アレ出した意味あるの?

話がそれた。ニュートに関しては、何度か観ている内に彼には彼なりの考えや優しさがあることも理解は出来たけど、心からは好きになれなかった。

 

もっと勘弁して欲しかったのがヒロインのティナで、これは物語を進めるための仕様なんだとは思っても、一応マクーザ捜査官(闇祓い)なのに、なんであんなに無能なのか?という…騒ぐだけ騒いで足を引っ張って、どんどん事態を悪くしていく一方で、どうしてこの人はそもそも闇祓いになれたのか…?という疑問しか沸かなかった。
最初にニュートを連れて行く段階でも、もっと巧い伝え方があっただろうし(現に長官はティナのことを気にかけて後で話を聞きに来てくれている)(あの段階で彼はグリンデルバルドなので、自分に不利益があったら困ると思って動いているのだろうとは思うが、それでも細かいところを放置せず気にかけている、という点はきちんとしている)、その後の「私が監視しないと!」みたいなはりきりっぷりもいいけど、ジェイコブを家に連れ帰らせといて病気かどうかとか診もせずに食事にしましょうって流れになるのはなぜ…?その人具合悪いからって男子禁制のアパートに連れ帰ったのではないの?

他にも新セイラム救世軍を追っかけていく過程でクリーデンスを見過ごせない…というのは分かるけれど、そこまでティナがこだわる理由が全然わからなくて、作中でろくに描写されないのにはええーという気持ち…

しかも中盤ようやく会議で人に話聞いてもらえる段階で、あんなにニュートとジェイコブを晒し者のようにしたくせに、ニュートにトランクを取り上げられたことにごめんなさい…って所で唖然としてしまった。取り上げられるって、危険物として晒し者にしたくせに、想定しなかったの?真っ先に自分が危険な動物を持ち込んだから条例に反している!って散々言ってたのに同じ政府のメンバーに見せて何のお咎めもなしだなんて思ってたの?本気か?

最初にニュートが魔法動物についての本を書いているというのに「駆除の本?」とか言ってた自分のこと棚に上げすぎでは?本当に解せぬ。

 

無能というならピッカリー議長もほんとうに本当にひどくって、なんであんなにあんぽんたんなトップを描くのか訳が分からなかった…あんな微妙な役をよりにもよってカルメン・イジョゴに演じさせたのかマジで恨む…なんか設定的には賢いらしいけど映画に一ミリもトップに立つべき人間の要素が感じられなかった…

しかも1920年代のアメリカで!黒人のルーツを持った女性がトップってそれだけの実力が故にその位置に立っているだろうに!なぜ!あんなに!人の話は聞かないし何が大事かも分からないし指示も下手くそなの!よく従ってたよグレイブス長官は!
もしこれが2016年を舞台に描かれていたなら、どんな役者がポンコツなトップを演じていても怒りはしなかったけれど、舞台が1920年ですよ!?マグルの世界では女性参政権がようやく認められて、まだ公民権運動も起こってなかった時代ですよ?!未だに頭に来るしあのキャラクターを優秀であるというの設定のくせに典型的なダメな政府の象徴としてしか描かなかったことがもう本当に許せない…!

 


唯一格好良いー!と思っていたグレイブス長官は、まあ、グリンデルバルドになってしまうので…
というか最初のグリンデルバルドのカットからすぐ映るコリン・ファレルの後頭部、さっきのグリンデルバルドとまんまでは…?普段イエーツこういう撮り方しないよね?こういうドランみたいな撮り方…と序盤に思ってしまったのが敗因でした。
中盤でクリーデンスに死の秘宝のシンボルマーク渡す所でもう確定だけど、本当はグレイブスとグリンデルバルドは別人が良かった…
というか!あの正体の現し方が!ひどくない?あれ魔法の呪文で解けちゃうんだ…となりました…
それこそニュートのトランクにいる魔法動物の持っている力や羽根とか鱗粉とかの副作用で、真実を露わにする、とかそういう方が納得できた…
魔法で捕らえられないグリンデルバルドが、魔法生物でなら捕らえられた、という流れは良かっただけになんだかすごくもやもやした…
というかそもそも味方側についていて、しかも高い地位にいる立場の人間が、実は悪人でしたー!という入れ替わりの驚きネタって、炎のゴブレッドでもうやったじゃん…またやる…?
そもそもなぜ入れ替わる必要性があったのかが分からなかった。グリンデルバルドには何か意図があったんだろうけれど、いつからグレイブスと入れ替わってたのかが不明なので、彼の意図が見えないんだよね。それで入れ替わってたのは実は悪の総本山でしたー!ジョニー・デップでーす!びっくりした?って聞かれてる気がしたんですけどいやあそんな入れ替わりネタ前にもやってたじゃないっすか…何を今更…?みたいな気持ちにしかならなくて…
そして出てきたジョニー・デップがさあ!なんであんな白塗りっぽいの?!
いい加減に白塗りキャラは卒業していただきたかったんですが…あのビジュアルでOK出した人にも本当恨む…
グリンデルバルドは格好いいビジュアルのキャラクターって原作で言われていただけに相当ショック…全盛期も真っ青なくらいの格好良さを更新してほしかった…直前までいたコリン・ファレルが最高に格好良かっただけに、もう何重にも叩きのめされた…
ここ数年あまり調子がいいとは言えなかったジョニー・デップの復帰作になるのでは、と期待していただけになんだかビジュアルも微妙だし、なんか「覚悟はいいか?」とか言ってるけど何をしでかそうとしてるか見えなさすぎて「えっこいつ何いってんの?」としかならんかった…
なんか、小物感が凄いんだよ…ヴォルデモートに比べれば、その前の時代の人なので当然やらかしてる事もヴォルデモートの方が邪悪なので、それより抑えた悪役になってしまうのは当然なのだけれど、なんだか小物臭が凄かった…グリンデルバルドに夢を見ていた私を返して…
グリンデルバルドとヴォルデモートの違いがあるとすれば「愛」に理解があるかないかって所で、そこはクリーデンスを漬け込むのにうまくやっていたとは思うのですが、演じていたのはコリン・ファレルですね、という…
次回も観るけど期待したのが間違いだったなあ…

 

ここまで散々なことを言ったけど、一番私に取って致命的だったのは、この映画「格好いい大人」がほぼ皆無なんですよね…
ハリポタシリーズにはいたんだよ。マクゴナガルとか、ルーピンとか、シャックルボルトとか、テッド・トンクスとか…勿論彼らはハリーの視点から観ているので、もっと葛藤があったり格好悪い部分も沢山あっただろうとは思うけれど(ルーピンはその辺も描かれてたね)
そして私はファンタビを「主人公が大人だからこそ、格好いい大人が出て来る」と期待していたんですよね…
でもニュートもまだまだ未熟だったし、ジェイコブやクイニーがギリギリ…?
一番格好良かった(何度でも言う)グレイブス長官は、中身がアレなのでノーカウントです。

 

他にも色んな箇所で、これハリポタシリーズの焼き直しでは…?
と思う箇所があまりに多すぎて、うまく乗れなかった…
試写会しか観ていない段階で感想を読んでいたら「ハリポタファンなら絶対楽しめる!」という言葉が散見されてたので、期待してしまった、というのが一番良くなかった…
全然楽しめなかったファンもここにいたよ、という話です。
いや面白かった部分もあったよ…あったけど…がっかりがあまりにも強すぎた…
でもキャラに萌えるのは分かる…Gredence萌えるよね…

 

最初に観た時、この作品は「かつてハリー・ポッターシリーズを観て楽しんでいた人たち、特に当時子供だった、今大人になった人たちへ」向けて作られた気がしたんですよね。
今子供向けというには暗い要素多すぎない?と単純に思った。
でも大人向けにしては、ちょっと大人を馬鹿にしてない?いや騙されないよ?とものすごく威嚇してしまったんだけど、三回観て「あっちゃんと子供向けに作ってある…分かりやすさとか親しみやすさとか…」となんとなく納得してしまった。ただ、今回はもうこのシリーズに100%魅了されなかったなあ…という他人事のような感じがしていました。
むしろ今までが自分の中に取り込みすぎて他人事でなくなっていた方がどうかしている。

 

これだけ言ってますが次回作はもっと違う場所で、また違う話になってくるとは思うので、見届けるつもりではいます。
もうそろそろこんなに愛憎入り混じりすぎておかしなことになっているから、もっと楽に観たら良かったのにね。
これは私が思った感想なので、間違ってこの映画が好きなのに最後まで読まれてしまった方は、なんだかとんでもないやつがピーチクパーチク言ってたなと思って脳から速やかに削除するのが一番幸せだと思います。

 

 

 

これから『呪いの子』読む方が百万倍自分がおかしくなりそうで今から怖い。




追記:一箇所名前を間違っていた所があったため訂正しました。指摘くださった方ありがとうございます!

 

ウォルター・メイブリーという男について(『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』感想ネタバレあり)

ダニエル・ラドクリフモンペ、ウォルター・メイブリーについて語る。

ふせったーでつぶやこうと思っていたら文字数制限に引っかかったのでこちらの投稿します。
最初から最後までウォルターとダンの話しかしていません。
真面目な、というか全体的な感想はまた別の機会にこちらにアップできたらいいなと思います。

という訳で肝心のダニエル・ラドクリフ初の悪役ということだったのですがすんごくキュートで最高でしたありがとうございました。
どこか小悪党抜け切れてない感じですが凄く良かった。

 

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このダニエル・ラドクリフがフォー・ホースメンを手玉に取っていると言わんばかりのポスター、日本版でしか見なかった気がするんですけどKADOKAWA様本当ありがとうございます!

 

ウォルターについて(ネタバレあり) 

まず予告編での出落ち感溢れる登場シーンが初登場なんですけど、あの「ジャジャーン!(TA-DA!)」は勿論最ッ高に可愛いんですが特筆すべきはその下。
足です。
なんと裸足なんですよ!
それだけで萌えるのに靴を履くシーンでモンペ号泣ですよ。足をぎゅっぎゅと靴にねじ込んでる姿観て、履けてえらいね…!って泣いてた(ダンは協調運動障害持ちなので靴紐を結ぶのが得意ではない)
この最初のシーンでは、かつて組んでいた筈の相棒に裏切られて密かに怒りを燃やしている悪の天才として描かれています。この辺の裏切りの話あたりはちょっとソーシャルネットワークっぽさを感じた。二人共若い会社だろうから余計に。相棒に情緒不安定だと言われて役員総会で締め出しを食らって…ってどんな奇行を働いていたんでしょうか。気になる。スピンオフocta待ってます。創業から頼む。オーウェン・ケース現CEOの出会いからみっちりやってほしい。多分ウォルターの家のガレージから会社がスタートするやつでしょ!?(それはアップル)

ついてきて!って言ってもついてこないフォー・ホースメンを手下使って無理矢理ついてこさせたりとか、ここは僕が話したいの!とむんずとウディハレちゃんの顔をつかむ所とか、無邪気で言うこと聞かない奴は嫌い!という子供っぽさに溢れてて可愛かった。あと小さいネタいじられてて笑った。小さいよねやっぱり。知ってた。ネタばらししたい!ここが楽しいところなんだよ!ときゃいきゃいしているのはマジシャンというよりは名探偵を気取りたい感じがあった。

そしてぎゅうぎゅうに詰めたソファで突如として見せられる問題のマカオ旅行!
「Our trip in Macau」のタイトルが出てきたと思いきや始まったスライドショーの数々に悶絶。寝ているフォー・ホースメンの横にウォルターが写り込んだ写真たちがまあかわいいこと。ダニエル・ラドクリフが中指立ててるの初めて見た気がします。もし見たことあるよ!という方がいらっしゃったら教えて下さい。実はこの写真たちSNSに流れてたので先に観てたけど、全部じゃなかったので良かったです。あれ凄くはしゃいでてかわいい。コマ送りにさせてほしい。円盤早く。

というか1年前に死んだということになってから、多分ウォルターはずっとマカオに潜伏していたと思われるのでフォー・ホースメンお迎えに行くためだけに飛行機往復した可能性があるのですが、馬鹿じゃないの…?多分オクタ社のプレゼンには顔が割れているのでそこに乗り込んでは行かないと思うのですよね。あそこでジャックの生存とディランの存在を暴露するのにカメラ大写しをするので、そこに万が一、同じく視認であるはずのウォルターが映ったらまずいことになる。だから彼は飛行機を降りていないか、もしくは降りたとしても長い間NYに滞在はしていないと思われる。

だからマカオからNY直行だとしても16時間かかる(本来はマカオの直行便はなく、香港の乗り継ぎでしか行けません。香港-NY間が片道約16時間弱)ので、あの4人(+1人)のために32時間も飛行機乗ってたことになるんですよ…馬鹿じゃないのかな…そりゃはしゃいであんな写真を撮るわ。というか皆寝てる中一人暇だから延々と遊んでるがな。スライドショー作る時間は腐るほどあったよね…音楽つけたりね…暇かよ…
自分のものを取り戻すのにお金があるんだから落札すればいいじゃないか、とジャックに言われたのに対して「落札?大金を積んで喜ばせるのか?」という言葉にケースに対するウォルターの激しい怒りを感じた。おちゃらけてきゃぴっとした悪役だったけど、あの瞬間の凄みだけは他とは全然違った。後でもちょくちょく凄みは出すんだけど、ここの真顔は本当怖い。

しかしその直後に言うこと聞かないと殺しちゃうぞ☆となんとも軽い口調で言うの最高!ああいう悪役大好きなんですよね。
続けて「マカオの警察・マスコミ・政治家は全部僕の支配下だから」ってもうマカオの闇の王じゃないですか!一国の王じゃん!自分が死んでいることにより、最強の匿名性を手に入れたんですよねウォルターは。だから影の支配者となってマカオも牛耳れた。本当はその辺で満足しておきなよ!でも一度会社で世界を支配できるようなチップを創り出したのだから、もうこの程度の規模じゃ済まないわけですよね。特別行政区一つでこの程度の規模って言うのもどうかと思いますが…この話はとにかく世界の規模が大きいからね!

 

しかし「じゃあよろしく☆」とホースメンに無理難題頼んだ後はしばらく出てこなくて、たまに上から見下ろしてるだけだからあれー物足りないなー!?という気持ちが…正直…もう少し出てきてもいいのよ…
でもダニエルを罠にハメて現れた時のハローハローとか、一々無邪気で可愛いんですよ…こういうタイプの悪役大好きなので本当に嬉しかった。
自分では戦わないんだろうなとは思っていたし実際ずっと部下に指示していただけだったのですが、まさかラファロに一発食らわせるとは思わなかった。止めは自分で刺す!背後から瓶で殴ってただけだけど。
そういやこの市場で戦うシーン、現れた人間が実はガラスに映った姿だった!というトリック、最近シャーロックやヴィクター・フランケンシュタインでも見かけました。流行りかな?

その後の展開で、ウォルターがただ単にフォー・ホースメンを目につけていたのではないことが発覚。彼の父親が前作フォー・ホースメンのパトロンであり、裏切られた大富豪アーサー・トレスラーだったのです。ここからウォルターは自分の私利私欲のための復讐だけでなく、父親が受けた屈辱の復讐を同時に果たそうとしていることが分かります。アーサーは保険会社を経営していますが、保険が下りるはずの人たちにお金を払わなかった悪人です。今回もその悪役っぷりは健在。
ウォルターが「僕は父と強い絆で結ばれている」と言い出した後にアーサーが「私の息子だ。非嫡出子だが出来がいい唯一の子」と言い出してびっくりしました。だから苗字が違うのですね。メイブリーは母親の姓なんだろうな。
ちなみにアーサーにはなんと嫡出子が7人もいるとのこと。子沢山!その割にこの親子仲睦まじいな…ちなみにウォルターは「Dad」呼びしていました。かんわいい!

その後のディランを金庫に沈めるシーンは最高に悪役でした。顔近づけての演説良かった…!君と僕は父親に執着している点が似ている、と言いながら父親との一番辛い思い出を的確にえぐってきます。ラファロにそんな酷いことするのやめてよお!と思う一方もっとやって!悪役っぷり発揮して最高!という気持ちに引き裂かれてながら観ていました。
金庫を沈めるタイミングを父親に譲るのも、ウォルターがアーサーを尊重しているのがよく分かります。作戦成功した後に二人で紅茶を飲んでいるのが英国人のテンプレートのようで笑ってしまった。
しかしここからがフォー・ホースメンの頑張りどころ。逆にウォルターは追いつめられていきます。フォー・ホースメンがこれから「死人をよみがえらせる」、つまりウォルターの生存を暴露する、の動画がインターネットに流出して以降は、余裕がまったくなくなっていきます。ちなみにあの動画見るシーンでも裸足でした。基本室内では裸足なんですね。日本においでよ。

後半の目がうるうるるんなところとかもうたまらなくて仕方なかった。顔色もどんどんけそけそしていくし、落ち着きがどんどんなくなっていって、ひたすら首の後ろをかいたりしている。
また、アーサーも同じく余裕がなくなっていくので、ウォルターへの態度がどんどん冷たくなっていくんですよね。

最後の高級なシャンパンをアーサーとかんぱーい!してからの「これこんな味したっけ?」は見事に罠にかかってて可愛かったです。そんな高級な飲み物飲んでたのか…まあ当たり前か…
結局彼はフォー・ホースメンに見事騙されてしまいました。一度はフォー・ホースメンを完全に殺したと思ったものの、それ自体が彼らのマジックの一部でした。一番恐れていた、「実は生きている」ということもバラされ、父親に警察に捕まってしまいます。
こうして映画はハッピーエンドで終わるのでした。

 

引っかかったこと 

全体的に悪役としては素晴らしく良かったのですが、いかんせんもうほんの少しでいいから出演量が多くても良かったかな。後半ちょっと尻すぼみ感あった…
そして予告で散々「マジックvs科学」みたいな煽りをしていた割にはその対比がうまく描かれていなかったかなと思いました。トランプをリレーしていくようなシーンは彼らの手先の技術と仕込みの力あってこそ!と思いましたが、フォー・ホースメンのマジックだって、テクノロジーや機材に頼ってる面は大いにあるんですよね。それはウォルターもフォー・ホースメンもあまり変わりがないように思えました。そうするならもっとウォルター側がマジックをやっている傍からガンガン種明かしをしたりとか、もっと科学的なアプローチをすればよかったのにと思います。
あれだとただ頭が良いらしいけれど、権力とテクノロジーを持ったただの男に見えてしまう。
中盤でウォルターの台詞「Science beats magic.」も、それはただダニエル・ラドクリフに言わせたいだけですよね?という感じがあった。

 

 ウォルターの人生について

しかし彼の人生を考えるとなんというか泣けてきて仕方ない。
会社の相棒には精神不安定と指摘され遠ざけられ、にっちもさっちもいかなくなってしまったので死んだことにして自分は匿名=表には決して明かされない存在として生きていくことを決めたのは悪役の浪漫のようでもありながら、なんだか切なさを覚えてしまいました。
一番つらかったのは最後のアーサーとのやりとりです。捕まっても尚「父さん、僕が何とかするよ」と悪あがきをしつつ父を支えようとするウォルターに対して、今まであれだけ「親というものは子供の欲しいものは手に入れてやりたい」だの「できの良い息子」だのと言っておきながら、自分にとって使えないことが分かるや否や 「父親と呼ぶな。母親なんて誰だか分からん」と言い出すんですよアーサーは。 ウォルターと一緒に呆然としたよね… 最後この台詞の後に「What?」とウォルターが聞き返すんですが、字幕では訳されていませんでした。
今まで自分のためでもあったけど、何より父親のために頑張ってきた筈なのにこの仕打ち…

きっと父親とはずっと仲睦まじかったわけではなくて、ずっと なんとか自分を目に留めて欲しかったからなのか 、頑張って自分の力でエンジニアとして努力していた所に前作の事件が起こり、この機会にと他の子たちにはない才能や努力を提示してやっとあの場所に立てたのかな、と思う。
会社作ったりしたのも、全部父親に認められたくて必死だったからなんだろな…
最初の登場シーンで白スーツなのも、父親の格好を意識しているのかな。前作でもアーサーの初登場や、公の場では白スーツなんだよね。でもアーサーが白スーツを着ている時は、ウォルターはおそろいは着ない。多分、着れない。
終盤、フォー・ホースメンからチップを手に入れ起動する時に、入れたキーワードが「DAD」なんですよね。あれも泣けてくる。

そして明らかにウォルターが命名しただろうキーワードから推察するに、会社は一緒に立ち上げたけれど、あのチップを作ったのはほとんどウォルターだったんじゃないかなと思いました。
また、ウォルターが立ち上げた会社がocta社で、新商品がocta8という製品だったのだけれど、ウォルターって多分8番目の子供じゃないですか。 というのも、アーサーと(演じる俳優マイケル・ケインとも)の年齢差を考えると7人の嫡出子の後の最後の子供かなと。そしてoctaには8の意味があります。彼にとって、8は多分自分の数字なんですよ。
だから会社も新商品も、自分の分身だったわけです。それを横取りされていたら、そりゃあまず復讐に燃えるわけだよ。

この辺に私はすごくブレイキング・バッドを感じていました。(私は何かとすぐブレイキング・バッドの雰囲気を感じ取るので気のせいと思って読み飛ばしてくださって結構です)
名前が「ウォルター」なのは勿論だけれど、理不尽な状況に追い詰められて友人と作った会社を自分だけやめされられるところ。幸いにしてこちらのウォルターが貧困にあえぐことはなかったけれど。
だから彼はマカオで孤独な王様のままでいれば良かったのに…とも思わなくもないのですが、一度死んだことにしてしまった以上、ずっと脅威にさらされ続けて行く羽目になるんですね。困難な人生を選ぶなあ。
誰か彼を幸せにしてあげてください…とりあえず父親は糞野郎だからさっさとファザコンやめなさいよ!
お友達が「実は生きていたラファロ父に弟子入りして擬似親子関係になり、ラファロを嫉妬させる」という案を出してくださったのでぜひともそちらを採用していただきたいです。3の製作は決定しています!ダンは出ないと思うけどやったね!

 

ダニエル・ラドクリフについて

彼自身に関して言えば、何故再びビッグバジェット映画のシリーズ、そして悪役を引き受けたのだろうとずっと思っていましたが、観てなんとなく分かったような気持ちになりました。
ウォルターという役は彼のキャリアに必要だった、というか、当時の興味がまさに<Privacy>であったのだな、と痛感しました。この世のすべての人のプライバシーを侵害するチップを作り出し、それを悪用しようとするキャラクターを演じたことは、彼にとってのプライバシーとは何ぞや?ということを我々に問いかけているような気がしています。
これの直後に舞台「Privacy」をやっていることが」まさに彼の興味を物語っている…プライバシーを脅かす側、脅かされる側をどちらも演じているんですよね。
それは幼い頃からずっとプライバシーを侵害されっぱなしで生きてきた彼ならではのアプローチに思えました。何故私は7~8月にNYで舞台を観に行けなかったのか、悔やむばかりです…

 

なんにせよ、初の悪役は大変良かったので、今回に限らず多くの役に挑戦して欲しいです。主人公のサポート役とか、ゴリッゴリの悪役も勿論。主役なのは嬉しいことこの上ないですけどね!
次に日本で公開されそうなのは何かあまり見当がつかないのですが、今はグランド・イリュージョン2がスクリーンで観られることを堪能しようと思います。
とりあえず4DXを満喫するつもりです。前作でも韓国ではやっていたけれど、日本ではまだ名古屋にしかなかった頃だったので。
こんなに公開規模が増えて本当に良かった。大ヒットしますように。

 

 

 

 

---以下妄言---

 

本当に誰かウォルターを幸せにしてやってよ…あの元相棒のCEOとは無理だよ…と思った結果、
獄中でハリー・オズボーンと出会ってドクター・オクトパスとしてインフィニティ・シックス加盟して黄昏の王国を築いて欲しいということしか浮かびませんでした。octaから派生してドクター・オクトパス。科学者だしね。
生まれて初めてクロスオーバーに走る人の気持ちが分かった。
撮られる予定だった映画の話をして泣いてたりはしてません。してないってば。

 

さよならなんて、言いたくない(アントン・イェルチンオールナイト)

 アントン・イェルチン追悼特集

本当のことを言うと、こんな日を迎えたくはなかった。 

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新文芸坐オールナイト「さよなら、アントン・イェルチン 君が行きた証」に行って来た。
約2ヶ月前に事故で亡くなったアントン27歳の。早過ぎる追悼上映だった。


彼のことは『スター・トレック(2009)』で知った。
ロシア訛りを話す天才的な頭脳を持ったメインクルー最年少、パヴェル・チェコフ少尉を演じていた。すごく柔和な雰囲気と知性を兼ね備え、フレッシュさを感じさせる青年と少年の中間のような人だったことを覚えている。
そこから何作か観ていて、どれも素敵な映画に出ている俳優だと思った。大作からアート作品まで幅広く出演しているようで、出演作をすべて観ている訳ではなかったけれどそれなりには追いかけていた。

突然としか言いようのなかった彼の訃報は、深夜に妹に叩き起こされて知った。
彼女は動揺して一人で抱えきれずに私を起こしたのだが、私は寝起きの頭では何を言われても頭に入ってこなかった。寝ぼけ眼でTwitterの画面をスクロールして、次々現れる断片的な情報を読んで、何を言っているのかさっぱり分からなかった。彼が陥った状況があまりにも不可解で、これは事故ではなく殺人の可能性があるのでは?と思っていた。というかそもそもガセではないのか?本当の事って何処にあるの?

スター・トレックの新作のプレミアツアーが始まる直前の話だった。
これからのプレミアは?チェコフ抜きでやるの?そんなことってある?
全然信じられないまま眠りについた。起きたら寝ぼけてたんだよって言って欲しかった。

 

起きても全然現実は変わらなかった。
相変わらず信じられない、という言葉が飛び交う中で、彼が車の事故で亡くなったという事実はそのままだった。
これからどうしたらいいのか分からなかった。
ただ、スター・トレック/ビヨンドを観るのが、ものすごく怖くなった。
あれだけ公開が遅れたことに怒っていたのに、7月にすぐ観なくちゃいけないと思うと、全然心の準備が出来ないと思った。

 

そんな時に決まったのがこの企画だった。
すぐに行こうと決めた。オッド・トーマス以外は未見だった。
スクリーンでアントンの作品を観れる機会は、これからずっと少なくなっていく。
今待機作がそれこそスタトレがあるけれど、彼を観れる機会があるなら、出来るだけ多く行くべきだ。
3年前、ポール・ウォーカーが亡くなった時も同じことを思った(彼が亡くなってからもう2年半も経っている!これだって信じられない!)

そうして13日の夜、新文芸坐に久々に来た。

 

映画あらすじ&感想(ネタバレあり)

『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』

唯一鑑賞済みだったのだけれど、今回これを観るのが一番怖くて仕方なかった。

この作品は「死者が見える」ちょっと変わった青年が、自分の街と恋人を守るために奮闘する話だから。
オッドは悪霊には立ち向かっていき、殺された人には優しく寄り添ったりする。
最初にアントンの姿が見えて声が聞こえただけでもう駄目だった。ぼろぼろ泣いていた。
これまで意識的に彼の姿をあまり観ないようにしていた。
観たら、否応がでも彼のことを考えてしまうから。
畳み掛けるようにして、序盤から殺された12歳の女の子に対してオッドは言う。

「心配ないよ。君がこれから行くのは魂の家で、優しさと驚きがあふれている所だ。
 かわいそうに、短い人生だったね」

この台詞は、まさにアントンに言い聞かせるように聞こえてしまって、駄目だった。声を出さないようにして、わんわん泣いてしまった。

話自体はとてもスリリングで、溢れる謎や襲ってくるかいいから軽快にオッドが逃げていくので、とにかく楽しい。
悪霊などが出てくるシーンなどは、割とホラー要素もある。
南カリフォルニアの砂漠がすぐ近くにある小さな町で、オッドは何かとてつもない殺戮が起こる前兆を感じる。
そして本当に起こり始めるおかしなことを照らし合わせながら、オッドは自分の能力を使い殺戮を防ごうとする。
登場人物が皆魅力的なので、彼らの掛け合いがたまらなくおかしい。
特にオッドの恋人のストーミーが最高だ。幼なじみでオッドの能力を知っていても、彼と常に共にいる。
強くて格好良くて優しくて素敵な人だ。このカップルがとてもとても好きで、ベストカップル賞を上げたくなる。
そして、オッドを信頼する警察署の署長がウィレム・デフォーという安心感。
ラストもやっぱり泣けるんだけど、爽やかに終わる快作。
監督が『ハムナプトラ』シリーズや『G.I.ジョー』を撮ったスティーヴン・ソマーズなので、安心して観られる。
Huluで配信しているので、加入している方はこの機会に是非。
ちなみにまさに8月14日から15日にかけての映画なので、今週に見るといいかもしれません。


『ゾンビ・ガール』

B級ゾンビコメディ映画!
これが今回思いがけずに素晴らしく面白かった。
オカルトマニアのマックス(アントン)は菜食主義者の彼女と付き合っているけれど、どこか自分とは合わないと思って別れを決意。
しかしその矢先に彼女が事故で死んでしまう。
失意の底にいたが、新しい恋を見つけた矢先になんと彼女がゾンビになって帰ってくる!?
もう死んでいるからこれなら永遠に一緒にいられる!と喜ぶ彼女にマックスはどうしたらいいのやら…
彼女と新しくいい雰囲気になる女の子の間で、奇妙な三角関係のようになってしまうマックス。
自分の意見を伝えようとするも、ゾンビになった彼女を怒らせると恐ろしいことになってしまう。
ゾンビあるあるネタ満載、でもそんなに怖くはないのでげらげら笑って観ていられる名作です。

 

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『ラスト・リベンジ』

老練スパイニコラス・ケイジ、前頭側頭型認知症(FTD)と診断されCIAを離れるも、自分が生涯追いかけ続けた敵が遂に姿を表しそうになり、秘密裏に追いかけていく。
こちらはアントン主演作ではなくニコラス・ケイジ。アントンは色々覚束なくなっている主人公エヴァンをサポートし、内緒で協力してくれるCIA職員ミルトンの役でした。
いいバディもののようでもあり、父親を介護する息子のようでもあった。
というのもミルトンはかつてCIAの任務で、本部に見放されるような失敗をしてしまった時に、エヴァンだけが彼を見捨てずに祖国へ返してくれたという恩があったのです。
ずっとエヴァンが追っていた敵の事も知っており、彼のために甲斐甲斐しく世話を焼き、サポートに徹します。
これも大変面白かったです。ニコラス・ウィンディング・レフンが製作総指揮だったのでどんなもんじゃろと思ってたんですが、カーチェイスバイオレンスも良かった!
スパイが認知症になったら…という設定がとにかく面白かった上に、一本の話がしっかりと進んでいって、良かったです。

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『君が生きた証』

今回のオールナイト特集のタイトルにもなっていたこの作品。
息子を亡くした父親が、彼の代わりに歌を歌うらしい、という薄ぼんやりなことしか知らずに観ていたら、予想もしない展開に呆然とした。途中からどうなるのかも全然分からなくなった。
まさに原題の『RUDDERLESS(舵のない船)』の気分を味わう。
アントンは主人公サムの歌を聞いて惚れ込み、一緒に歌おう!と持ちかけるバンドマン、クェンティンを演じている。
普段姿勢のいいアントンがこの役ではものすごい猫背で、クェンティンの自信のなさが漂う演技がすごいと月並なことを思った。
ぐいぐい来てはおしゃべりがやめられない、でも礼儀正しい面も持ちあわせており、人を寄せ付けなかったサムも、段々心を開いていきます。
初めて二人が歌った瞬間は「アントンはバンド活動もしてたんだよな…」と思ってからまた泣きっぱなしになる。
ライブシーンがとにかく楽しそうで、だからこそ余計に涙が止まらなかった。
この映画の最初にかかるのが「ASSHOLE(馬鹿野郎)」という曲で、行きずりの彼女と別れてごめんねバカで、みたいな歌なんですけど、最初の歌詞が

「さあ、別れの時が来た
 忘れられない最後にしよう
 君と別れるのはいつだって楽しい」

全然楽しくないよ、どうしよう、この映画が終わったらサヨナラを言わなきゃいけない、と考えてしまって入り込めるのかどうか不安になるくらいだった。
けれどこの映画は気づいたら息をするのも忘れるくらいにのめり込んで、衝撃を受けて、楽しくて、ぐっと胸に詰まった。
本当に良かったなんて言葉では言い表わせない傑作。この作品を音響の良い新文芸坐で観れたことが、奇跡のように感じた。
エンドロールでもアントンの歌声が聴こえてきたら、もうそこからは泣いて泣いて仕方なかった。
終わってから、監督がバーのマスター役を演じていた俳優 ウィリアム・H・メイシーで、彼のデビュー作だと知った。
凄まじい人だと思う…こういう形でもっと作品を撮って欲しいし、演じて欲しい…

 

君が生きた証 [DVD]

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DVDしか日本で発売されていないのが、信じられない。

 

 


場内が明るくなっても、暫く立てなかった。
終わってみて、オールナイト上映で初めて一睡もしなかったことに気がついた。
4本くらいあると大抵1本は観たことがあって、それでだいたいうとうとしたりしてしまうのだけれど、この日は全く無かった。
オッド・トーマス以外は初見だったからすごく心配したんだけど、とてもきちんと観れていた。
あと全然関係ないですが、隣に座っている方がとんでもなくいい香りがしていて、鑑賞中とても良い気持ちで鑑賞できていた。オールナイトで映画観る時は、常に隣に座っていて欲しいと思うくらいいい匂いだった。最高。

 

改めて記すけれど、アントン・イェルチン、作品の選眼がありとあらゆる俳優の中でトップクラスだと思う。
面白い脚本を見つけ、自分のことをきちんと理解していて、最も魅力を引き出せる役を選んでいる。
出演している作品、今まで観た中でつまらなかった作品が一本もない。これってすごい才能だ。
まだ観れていない彼の作品を、全部観終わってしまうのは勿体無いと思ってしまうので、家でBlu-rayとかで観るならゆっくりと観ていきたい。
ショーン・パトリック・フラナリーと共演作『約束の馬(原題:Broken horses)』が、気づいたら配信スルーになっていたのでこちらを観ようと思ったが、内容がなかなかに重そうで観るのに覚悟が入りそう。
この作品でもアントンは音楽家を目指していた。つくづく音楽が好きな人なんだと思う。

 

 

 

 

 

 

ああでもやっぱり、『スター・トレック/ビヨンド』を観るのが怖い。
もっと怖いのは、ビヨンドの続編が作られるのが決定したこと。
彼の代役は立てない、とJ・J・エイブラムスが言っているのでそれはとても安心した。
けれど一方で、新しい作品が作られたら、どうしたって彼の不在を見つめなくてはいけないから。
わがままが叶うなら、スター・トレックのこのシリーズは、ビヨンドで終わりにして欲しい。
こんなこと書くのは酷いと思うし、もう続編は決定しているらしいのでどうしようもないけれど。

アントンの演じるチェコフがいるスター・トレックを、もっと、ずっと、観ていたかった。
去年レナード・ニモイが亡くなって、TOSのメンバーがどんどんいなくなってしまう…と思っていたばかりだったから。
だからAOSは、TOSに負けないくらい、映画だけでなくてなんならそれこそドラマに移行したりしてもいいな、3シーズンで終わらないくらい、長寿のシリーズになっていけばいいな、って、思っていたのに。
嫌だよアントン。本当は綺麗な発音が出来る君の、酷いロシア訛りを聴きたいよ。
もっと演じて欲しかったし、もっと歌って欲しかった。もっと生きていて欲しかった。
大好きだよ。今までも、これからも。
今はまだ、さよならは言わない。そんな言葉、言いたくない。