熱に羽化されて

好きすぎてこじらせたうわ言や思考の整理など

ウォルター・メイブリーという男について(『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』感想ネタバレあり)

ダニエル・ラドクリフモンペ、ウォルター・メイブリーについて語る。

ふせったーでつぶやこうと思っていたら文字数制限に引っかかったのでこちらの投稿します。
最初から最後までウォルターとダンの話しかしていません。
真面目な、というか全体的な感想はまた別の機会にこちらにアップできたらいいなと思います。

という訳で肝心のダニエル・ラドクリフ初の悪役ということだったのですがすんごくキュートで最高でしたありがとうございました。
どこか小悪党抜け切れてない感じですが凄く良かった。

 

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このダニエル・ラドクリフがフォー・ホースメンを手玉に取っていると言わんばかりのポスター、日本版でしか見なかった気がするんですけどKADOKAWA様本当ありがとうございます!

 

ウォルターについて(ネタバレあり) 

まず予告編での出落ち感溢れる登場シーンが初登場なんですけど、あの「ジャジャーン!(TA-DA!)」は勿論最ッ高に可愛いんですが特筆すべきはその下。
足です。
なんと裸足なんですよ!
それだけで萌えるのに靴を履くシーンでモンペ号泣ですよ。足をぎゅっぎゅと靴にねじ込んでる姿観て、履けてえらいね…!って泣いてた(ダンは協調運動障害持ちなので靴紐を結ぶのが得意ではない)
この最初のシーンでは、かつて組んでいた筈の相棒に裏切られて密かに怒りを燃やしている悪の天才として描かれています。この辺の裏切りの話あたりはちょっとソーシャルネットワークっぽさを感じた。二人共若い会社だろうから余計に。相棒に情緒不安定だと言われて役員総会で締め出しを食らって…ってどんな奇行を働いていたんでしょうか。気になる。スピンオフocta待ってます。創業から頼む。オーウェン・ケース現CEOの出会いからみっちりやってほしい。多分ウォルターの家のガレージから会社がスタートするやつでしょ!?(それはアップル)

ついてきて!って言ってもついてこないフォー・ホースメンを手下使って無理矢理ついてこさせたりとか、ここは僕が話したいの!とむんずとウディハレちゃんの顔をつかむ所とか、無邪気で言うこと聞かない奴は嫌い!という子供っぽさに溢れてて可愛かった。あと小さいネタいじられてて笑った。小さいよねやっぱり。知ってた。ネタばらししたい!ここが楽しいところなんだよ!ときゃいきゃいしているのはマジシャンというよりは名探偵を気取りたい感じがあった。

そしてぎゅうぎゅうに詰めたソファで突如として見せられる問題のマカオ旅行!
「Our trip in Macau」のタイトルが出てきたと思いきや始まったスライドショーの数々に悶絶。寝ているフォー・ホースメンの横にウォルターが写り込んだ写真たちがまあかわいいこと。ダニエル・ラドクリフが中指立ててるの初めて見た気がします。もし見たことあるよ!という方がいらっしゃったら教えて下さい。実はこの写真たちSNSに流れてたので先に観てたけど、全部じゃなかったので良かったです。あれ凄くはしゃいでてかわいい。コマ送りにさせてほしい。円盤早く。

というか1年前に死んだということになってから、多分ウォルターはずっとマカオに潜伏していたと思われるのでフォー・ホースメンお迎えに行くためだけに飛行機往復した可能性があるのですが、馬鹿じゃないの…?多分オクタ社のプレゼンには顔が割れているのでそこに乗り込んでは行かないと思うのですよね。あそこでジャックの生存とディランの存在を暴露するのにカメラ大写しをするので、そこに万が一、同じく視認であるはずのウォルターが映ったらまずいことになる。だから彼は飛行機を降りていないか、もしくは降りたとしても長い間NYに滞在はしていないと思われる。

だからマカオからNY直行だとしても16時間かかる(本来はマカオの直行便はなく、香港の乗り継ぎでしか行けません。香港-NY間が片道約16時間弱)ので、あの4人(+1人)のために32時間も飛行機乗ってたことになるんですよ…馬鹿じゃないのかな…そりゃはしゃいであんな写真を撮るわ。というか皆寝てる中一人暇だから延々と遊んでるがな。スライドショー作る時間は腐るほどあったよね…音楽つけたりね…暇かよ…
自分のものを取り戻すのにお金があるんだから落札すればいいじゃないか、とジャックに言われたのに対して「落札?大金を積んで喜ばせるのか?」という言葉にケースに対するウォルターの激しい怒りを感じた。おちゃらけてきゃぴっとした悪役だったけど、あの瞬間の凄みだけは他とは全然違った。後でもちょくちょく凄みは出すんだけど、ここの真顔は本当怖い。

しかしその直後に言うこと聞かないと殺しちゃうぞ☆となんとも軽い口調で言うの最高!ああいう悪役大好きなんですよね。
続けて「マカオの警察・マスコミ・政治家は全部僕の支配下だから」ってもうマカオの闇の王じゃないですか!一国の王じゃん!自分が死んでいることにより、最強の匿名性を手に入れたんですよねウォルターは。だから影の支配者となってマカオも牛耳れた。本当はその辺で満足しておきなよ!でも一度会社で世界を支配できるようなチップを創り出したのだから、もうこの程度の規模じゃ済まないわけですよね。特別行政区一つでこの程度の規模って言うのもどうかと思いますが…この話はとにかく世界の規模が大きいからね!

 

しかし「じゃあよろしく☆」とホースメンに無理難題頼んだ後はしばらく出てこなくて、たまに上から見下ろしてるだけだからあれー物足りないなー!?という気持ちが…正直…もう少し出てきてもいいのよ…
でもダニエルを罠にハメて現れた時のハローハローとか、一々無邪気で可愛いんですよ…こういうタイプの悪役大好きなので本当に嬉しかった。
自分では戦わないんだろうなとは思っていたし実際ずっと部下に指示していただけだったのですが、まさかラファロに一発食らわせるとは思わなかった。止めは自分で刺す!背後から瓶で殴ってただけだけど。
そういやこの市場で戦うシーン、現れた人間が実はガラスに映った姿だった!というトリック、最近シャーロックやヴィクター・フランケンシュタインでも見かけました。流行りかな?

その後の展開で、ウォルターがただ単にフォー・ホースメンを目につけていたのではないことが発覚。彼の父親が前作フォー・ホースメンのパトロンであり、裏切られた大富豪アーサー・トレスラーだったのです。ここからウォルターは自分の私利私欲のための復讐だけでなく、父親が受けた屈辱の復讐を同時に果たそうとしていることが分かります。アーサーは保険会社を経営していますが、保険が下りるはずの人たちにお金を払わなかった悪人です。今回もその悪役っぷりは健在。
ウォルターが「僕は父と強い絆で結ばれている」と言い出した後にアーサーが「私の息子だ。非嫡出子だが出来がいい唯一の子」と言い出してびっくりしました。だから苗字が違うのですね。メイブリーは母親の姓なんだろうな。
ちなみにアーサーにはなんと嫡出子が7人もいるとのこと。子沢山!その割にこの親子仲睦まじいな…ちなみにウォルターは「Dad」呼びしていました。かんわいい!

その後のディランを金庫に沈めるシーンは最高に悪役でした。顔近づけての演説良かった…!君と僕は父親に執着している点が似ている、と言いながら父親との一番辛い思い出を的確にえぐってきます。ラファロにそんな酷いことするのやめてよお!と思う一方もっとやって!悪役っぷり発揮して最高!という気持ちに引き裂かれてながら観ていました。
金庫を沈めるタイミングを父親に譲るのも、ウォルターがアーサーを尊重しているのがよく分かります。作戦成功した後に二人で紅茶を飲んでいるのが英国人のテンプレートのようで笑ってしまった。
しかしここからがフォー・ホースメンの頑張りどころ。逆にウォルターは追いつめられていきます。フォー・ホースメンがこれから「死人をよみがえらせる」、つまりウォルターの生存を暴露する、の動画がインターネットに流出して以降は、余裕がまったくなくなっていきます。ちなみにあの動画見るシーンでも裸足でした。基本室内では裸足なんですね。日本においでよ。

後半の目がうるうるるんなところとかもうたまらなくて仕方なかった。顔色もどんどんけそけそしていくし、落ち着きがどんどんなくなっていって、ひたすら首の後ろをかいたりしている。
また、アーサーも同じく余裕がなくなっていくので、ウォルターへの態度がどんどん冷たくなっていくんですよね。

最後の高級なシャンパンをアーサーとかんぱーい!してからの「これこんな味したっけ?」は見事に罠にかかってて可愛かったです。そんな高級な飲み物飲んでたのか…まあ当たり前か…
結局彼はフォー・ホースメンに見事騙されてしまいました。一度はフォー・ホースメンを完全に殺したと思ったものの、それ自体が彼らのマジックの一部でした。一番恐れていた、「実は生きている」ということもバラされ、父親に警察に捕まってしまいます。
こうして映画はハッピーエンドで終わるのでした。

 

引っかかったこと 

全体的に悪役としては素晴らしく良かったのですが、いかんせんもうほんの少しでいいから出演量が多くても良かったかな。後半ちょっと尻すぼみ感あった…
そして予告で散々「マジックvs科学」みたいな煽りをしていた割にはその対比がうまく描かれていなかったかなと思いました。トランプをリレーしていくようなシーンは彼らの手先の技術と仕込みの力あってこそ!と思いましたが、フォー・ホースメンのマジックだって、テクノロジーや機材に頼ってる面は大いにあるんですよね。それはウォルターもフォー・ホースメンもあまり変わりがないように思えました。そうするならもっとウォルター側がマジックをやっている傍からガンガン種明かしをしたりとか、もっと科学的なアプローチをすればよかったのにと思います。
あれだとただ頭が良いらしいけれど、権力とテクノロジーを持ったただの男に見えてしまう。
中盤でウォルターの台詞「Science beats magic.」も、それはただダニエル・ラドクリフに言わせたいだけですよね?という感じがあった。

 

 ウォルターの人生について

しかし彼の人生を考えるとなんというか泣けてきて仕方ない。
会社の相棒には精神不安定と指摘され遠ざけられ、にっちもさっちもいかなくなってしまったので死んだことにして自分は匿名=表には決して明かされない存在として生きていくことを決めたのは悪役の浪漫のようでもありながら、なんだか切なさを覚えてしまいました。
一番つらかったのは最後のアーサーとのやりとりです。捕まっても尚「父さん、僕が何とかするよ」と悪あがきをしつつ父を支えようとするウォルターに対して、今まであれだけ「親というものは子供の欲しいものは手に入れてやりたい」だの「できの良い息子」だのと言っておきながら、自分にとって使えないことが分かるや否や 「父親と呼ぶな。母親なんて誰だか分からん」と言い出すんですよアーサーは。 ウォルターと一緒に呆然としたよね… 最後この台詞の後に「What?」とウォルターが聞き返すんですが、字幕では訳されていませんでした。
今まで自分のためでもあったけど、何より父親のために頑張ってきた筈なのにこの仕打ち…

きっと父親とはずっと仲睦まじかったわけではなくて、ずっと なんとか自分を目に留めて欲しかったからなのか 、頑張って自分の力でエンジニアとして努力していた所に前作の事件が起こり、この機会にと他の子たちにはない才能や努力を提示してやっとあの場所に立てたのかな、と思う。
会社作ったりしたのも、全部父親に認められたくて必死だったからなんだろな…
最初の登場シーンで白スーツなのも、父親の格好を意識しているのかな。前作でもアーサーの初登場や、公の場では白スーツなんだよね。でもアーサーが白スーツを着ている時は、ウォルターはおそろいは着ない。多分、着れない。
終盤、フォー・ホースメンからチップを手に入れ起動する時に、入れたキーワードが「DAD」なんですよね。あれも泣けてくる。

そして明らかにウォルターが命名しただろうキーワードから推察するに、会社は一緒に立ち上げたけれど、あのチップを作ったのはほとんどウォルターだったんじゃないかなと思いました。
また、ウォルターが立ち上げた会社がocta社で、新商品がocta8という製品だったのだけれど、ウォルターって多分8番目の子供じゃないですか。 というのも、アーサーと(演じる俳優マイケル・ケインとも)の年齢差を考えると7人の嫡出子の後の最後の子供かなと。そしてoctaには8の意味があります。彼にとって、8は多分自分の数字なんですよ。
だから会社も新商品も、自分の分身だったわけです。それを横取りされていたら、そりゃあまず復讐に燃えるわけだよ。

この辺に私はすごくブレイキング・バッドを感じていました。(私は何かとすぐブレイキング・バッドの雰囲気を感じ取るので気のせいと思って読み飛ばしてくださって結構です)
名前が「ウォルター」なのは勿論だけれど、理不尽な状況に追い詰められて友人と作った会社を自分だけやめされられるところ。幸いにしてこちらのウォルターが貧困にあえぐことはなかったけれど。
だから彼はマカオで孤独な王様のままでいれば良かったのに…とも思わなくもないのですが、一度死んだことにしてしまった以上、ずっと脅威にさらされ続けて行く羽目になるんですね。困難な人生を選ぶなあ。
誰か彼を幸せにしてあげてください…とりあえず父親は糞野郎だからさっさとファザコンやめなさいよ!
お友達が「実は生きていたラファロ父に弟子入りして擬似親子関係になり、ラファロを嫉妬させる」という案を出してくださったのでぜひともそちらを採用していただきたいです。3の製作は決定しています!ダンは出ないと思うけどやったね!

 

ダニエル・ラドクリフについて

彼自身に関して言えば、何故再びビッグバジェット映画のシリーズ、そして悪役を引き受けたのだろうとずっと思っていましたが、観てなんとなく分かったような気持ちになりました。
ウォルターという役は彼のキャリアに必要だった、というか、当時の興味がまさに<Privacy>であったのだな、と痛感しました。この世のすべての人のプライバシーを侵害するチップを作り出し、それを悪用しようとするキャラクターを演じたことは、彼にとってのプライバシーとは何ぞや?ということを我々に問いかけているような気がしています。
これの直後に舞台「Privacy」をやっていることが」まさに彼の興味を物語っている…プライバシーを脅かす側、脅かされる側をどちらも演じているんですよね。
それは幼い頃からずっとプライバシーを侵害されっぱなしで生きてきた彼ならではのアプローチに思えました。何故私は7~8月にNYで舞台を観に行けなかったのか、悔やむばかりです…

 

なんにせよ、初の悪役は大変良かったので、今回に限らず多くの役に挑戦して欲しいです。主人公のサポート役とか、ゴリッゴリの悪役も勿論。主役なのは嬉しいことこの上ないですけどね!
次に日本で公開されそうなのは何かあまり見当がつかないのですが、今はグランド・イリュージョン2がスクリーンで観られることを堪能しようと思います。
とりあえず4DXを満喫するつもりです。前作でも韓国ではやっていたけれど、日本ではまだ名古屋にしかなかった頃だったので。
こんなに公開規模が増えて本当に良かった。大ヒットしますように。

 

 

 

 

---以下妄言---

 

本当に誰かウォルターを幸せにしてやってよ…あの元相棒のCEOとは無理だよ…と思った結果、
獄中でハリー・オズボーンと出会ってドクター・オクトパスとしてインフィニティ・シックス加盟して黄昏の王国を築いて欲しいということしか浮かびませんでした。octaから派生してドクター・オクトパス。科学者だしね。
生まれて初めてクロスオーバーに走る人の気持ちが分かった。
撮られる予定だった映画の話をして泣いてたりはしてません。してないってば。