熱に羽化されて

好きすぎてこじらせたうわ言や思考の整理など

髪の毛一本たりとも関係ない

先日、髪を切った。約三ヶ月半ぶりだった。
普段ショートカットが常の私だが、前回切った時はあまり長さをいじらなかった。
そのお陰で、切りに行く頃には肩に髪の毛がつきそうなくらいの長さになっていた。これは、私の基準で言えば「とても長い」に当てはまる。
ここ2、3年はワンレングスの前髪に前下がりのショート、たまにサイドや後ろを刈り上げていたのだが、今回は暑さ対策として新しい髪型に挑戦してみようと少しだけ思っていた。

やりたかったのは、映画『二ツ星の料理人』の登場人物、エレーヌの髪型である。
予告に出てくる、リクルートされたり出て行けと言われたりする料理人の女性だ。 

 

youtu.be

この映画は、主人公が才能はあるがどうしようもないろくでなしで、一度は自分の店を壊して全てを失ってしまう。そんな彼が一から奮起して三ツ星レストランを目指す話である。
人間は支え合いが必要なことを描いているのと、プロフェッショナルの仕事っぷりと、美味しそうな食事が沢山観られるのでとても好きな映画だ。怒鳴り声が苦手な人はちょっと注意が必要。
Netflixにあるので、時間のある時にどうぞ。

www.netflix.com

 

話を元に戻す。
私が参考にしたエレーヌは、髪の毛を下ろしていれば長めのボブっぽく見えるのだが、髪を結ぶと後ろが刈り上がっているという、あまり見ないスタイルの髪型である。想像出来なかった人は、先程紹介した予告を見て欲しい。
これはただ単にショートカットにするよりも絶対涼しい。結んだ方が涼しいと聞いていたが、更に後頭部の下の部分に髪の毛がなければ更に涼しいだろう。
しかもパッと見は刈り上げとは分からないので、TPOに合わせて髪型を変えられるのも魅力だった。特に今髪型にどうこう言われるような環境ではないため、好きに出来るのだが。

ただ、髪の量によっては結べないこともあるだろうと思って、出来なかった場合はいつも通りのショートカット、でもそれもいつもよりうんと短くしてやろう。そう思いながら美容院に行った。
私はいつも切りたい!と思ったらもうその日か次の日には切りたいと言う面倒くさい衝動に襲われるタイプのなのだが、徒歩で行ける近所のかかりつけは、最近は混んでいるから少なくとも1週間後と言われた。人数制限をしている中、緊急事態宣言が解除されたので予約がひっきりなしに入るのだそうだ。
大人しく1週間待ち、ようやく当日を迎えた。いつもの担当の人に実際に写真を見せて説明をしたら、「うーん…」と言うので、ああやっぱりちょっと長さが足りなかったかしら、と思っていたら、予想外のことを言われた。

 

「ちょっと個性的過ぎるけど、良いの?」

 

「はい、問題ないです」と間髪入れず即答した。まさかそんな答えが返ってくるとは思っても見なかった。この人は今までも私が刈り上げてくれ、とお願いした時にもほんの少しだけ、何度も確認されたことがあった。が、それはまだ私が通い慣れていなかった頃の話である。
「この辺りだとそういう髪型の人はあまりいない」とも言われた。百も承知である。けれどそれは私にとっては何の問題もない。人の目を気にして自分のやりたい髪型をしないなんて、馬鹿げている。
この髪型だと後で修正があまり出来ないから、本当にやる?と尋ねられて、なかなか始められなかった。
リスクに関しても分かっていると話した。気に入らなければ単なるツーブロックにして貰えば良いと思っていたのだった。
結局お願いした髪型にしてもらうことになったが、後ろの刈り上げもハサミでやろうとしたので、いやバリカンで、とお願いした。ハサミで刈り上げる方が、シルエットが丸みを帯びて綺麗なのは知っている。しかし私が求めているのはそれではない。なんなら形は見えないことの方が多い。涼しさなのだ。出来るだけ刈り上げは短くするに限る。
しかし、バリカンも一番長く髪が残る設定でされたので「いやもっと短く」「すみません3mmでお願いします」と繰り返していた。どうせ1週間も経てば6mmにも9mmにもなるのだ、頼むから短くしてくれと言うオーダーを繰り返すのは時間の無駄ではないだろうか?
結局、切り終えたら「あ、結構良いな」と担当の人は言った。
ほらーーー言わんこっちゃない!!!と心の中で叫んだが、口にはしなかった。
普段よりちょっぴり疲れて美容院を出た。担当の人は映画が好きな人なので、普段は色々映画の話をするけれど、その日はあまりしなかった。

 

美容院で言われる「女性らしいシルエット」みたいな表現が嫌いだ。
私の自認は今のところ女性だが、「女性らしい」と言うものの規範に収まるかどうかは私が決める。
勿論、今はもうちょっと丸みを帯びた髪型の方が今は良いな、と思う時も10年にいっぺんくらいはあるので、それが世間一般で言うところの「女性らしい」に当てはまることはある。けれど、私がやって欲しいと望む髪型を示す時に「女性らしさ」と言う言葉は使ったことがないし、そこはお願いしていない。「可愛くして欲しい!」とお願いして、それに合わせてやってくれるのはありがたいしやったこともある。
けれど、望んでいない時に余計なオプションをつけないで欲しい。
美容師さん達は、勿論プロフェッショナルなので「こう見える」ことに対してきちんと見てくれる。
流行りの髪型などもあるので、それを個人に落とし込むのもとても上手だ。
けれど、お願いだからあまり見ない髪型だからって拒否しないで欲しい。人と違うことに怯えていない人に対しては、そんなにブレーキをかけなくて良い。

 

話は変わるが、先日大学生の従姉妹とテレビ電話をした。大学がオンライン授業になり、バイトも出来なくなっていたので、緊急事態宣言が始まる遥か前に実家に帰っていたのだった。
しばらくぶりに話す彼女はずいぶん髪が伸びていた。
「髪でも染めようかな」と言うのでどう言う感じにしたいのか、貴方ならこう言うのも似合うかも、みたいな話をした。すると、彼女はこう言った。
「でもね、この辺りだと金髪にしただけで不良になったの?って言われるからちょっと難しいんだよね」
たかが髪の毛なのに、と思ったがまあ向こうの、本人と言うよりも住んでいる地域に関しては様々な事情があるので何も言えず、「そうだよね」と同調して終わった。果たして同じ立場におかれたら、私だってちょっと躊躇するだろうと思った。まあ躊躇した後やりそうなんだが……

 

どうして人の髪型や髪色に対して、驚くほど文句をつけたり変な目で見る人が多いんだろう。
ここ最近も、「ツーブロック禁止」と都立高校の校則が話題になっていた。

https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/two-block-hair-style-school-rule

ある程度のTPOはある(私のこの言葉も既に曖昧だが)が、危険に巻き込まれやすいとはどう言う定義なんだろう。
工場で働いている人が、髪の毛がベルトコンベアに挟まる危険があるので結ぶか巻き込まれづらい髪型をするか、帽子などに仕舞い込む必要がある、と言うのなら分かる。この状況下で髪型に関するルールを守らないと、命に関わるレベルで危険だからだ。
しかし、この校則は分からない。規定の中に当てはめることに躍起になって、本来何故この校則があるのか、それは時代に沿ったものなのか、と言う話がされないのも残念だった。
何より、他人の見た目にどうこう言う人間が多過ぎてうんざりする。
私が刈り上がっていようとも、男子高校生がツーブロックだろうとも、法律に反しているわけではないし、他人の人生とは全く関係ない。
他人の見た目にケチをつけたり、文句を言う人間が多過ぎると思う。
「太ったね」とかもそうだ。「男らしくないね」「もっと女っぽい格好すれば」「肌の色が違う」こんな言葉達、ぜーんぶ、言わなくて良いことだ。
もしそれを言いたくなるような気持ちになるなら、それはどうしてなのかを考えて欲しい。
言われた側は、傷つくけれど、傷つく必要は一切ないので、言い返すなり、美味しいものを食べて忘れるなりしてください。心ないことを言われた人が、減りますように。

 

ちなみに今、1週間ほど経ったが、この髪型は驚くほど快適。
ヨガをする時、寝転がるポーズ以外は結んで出来る。
腹筋を鍛える時、終わると襟足がびしょびしょになっていたのがタオルで拭くだけで解決する。
結ばなくてもそこまで邪魔ではないので、何もしなくても良い。
ドライヤーをかける時間も短縮された。大変に良いことづくめで、私の頭はとても軽い。

 

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左側に髪の毛を寄せているが、この下も全て刈り上がっている。

ちなみに、このドピンクのTシャツは、ランクヘッドのライブTシャツです。
うしおととらのテーマソングとかやってるから、ついでに聞いてって欲しい。

 


LUNKHEAD「決戦前夜」(ショートver.)