熱に羽化されて

好きすぎてこじらせたうわ言や思考の整理など

映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』にKOされた

今週のお題「上半期ベスト◯◯」

今年の映画は初っ端から『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』やら『WEIRD:Al Yankovic Story』(日本未公開)やらを観てしまい、そこから面白いと思う映画が例年に比べて多かった。今年は好みに合う作品が多くて当たり年だなと楽しく観ていた私の前に、とんでもない作品が現れた。

 

それが映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』である。

 

予告編を見るとかなり心配な出来だったのだが、批評家の評価は高いらしいという話だけ聞いており、4月1日が休日だったので観に行ったらとんでもないことになった。

 

 

【はとの鑑賞時ステータス】

TRPG:やったことない

ダンジョンズ&ドラゴンズ:プレステとかで遊ぶゲーだと思っていた

ストレンジャーシングス:観てない

映画:好き。たくさん観る

クリス・パイン:会ったことある*1

 

あらすじ

人間やエルフ、様々な種族がおり、街だけでなく危険なダンジョンが広がる世界、フォーゴトン・レルム。盗賊(吟遊詩人)のエドガンは、相棒の戦士ホルガと共に娘を取り戻す旅に出る。パーティーメンバーに魔術師のサイモン、様々なものに変身できる能力を持ったドリックが加わり、途中で聖騎士ゼンクの手も借りながら、旅が進むにつれて、世界を揺るがす陰謀に巻き込まれ…?

 

感想

映画だ!を感じた

ということで感想なのだが、びっくりするほど良かった。素直に面白かったー!と叫びたくなる一作。

原作のことを何も知らなかったが、「ようこそ!」とこの世界にグイグイ引き込んでくれる親切設計かつ、テンポ良く進み続けるのでわーっと2時間没入できて、「ああいい映画観た!」と満足できる作品になっていた。

ストーリーはシンプルな冒険ものだが、よくよく注意していると、細かい伏線がしっかりと張り巡らされており、それが綺麗に回収されていく。でも注意していなくても理解は出来る。作中でやらなければいけないミッションがかなり多いのだが、それをテンポよく観せてくれるので飽きない。テンポと展開が早い映画が大好きなので、波長が合うな!と思った。けれど大事な所にはきっちり尺を取る。ただ、そこで長過ぎもしない塩梅がとても良かった。

よっっぽど海外ファンタジーは苦手、絶対寝る、という人でなければ、最近映画館行っていないけど何か面白い映画ないかな、という人がいたらこれを勧めてしまうと思う(人によっては『AIR』などを勧めると思うけど)

また、ティーンエイジャーの子たちが、親につれてってもらうのではなく、初めて友達と映画を観に行こう、という時に全力でオススメしたい作品でもあった。春休みはすっかり終わってしまってしまい、書き始めた頃にはまだGW中で上映してくれている映画館もあったのだが、最早どこにもやってはいない。配信(購入・レンタル)は既に始まっており、ソフトが7/21に発売予定なので、機会があればまだ観ていない人は観てほしい。

 

キャラクターが皆好き

元々クリス・パインが好きなので、彼が出ているだけで映画を観に行く理由になる。というか当初は作品自体には殆ど期待していなかった。主演だから沢山観れるだろうなー、というくらい。基本的に「観る」と決めてしまった映画はそれ以降の情報を観ないようにするので、「ゲームが原作」「クリス・パインミシェル・ロドリゲスヒュー・グラントが出演している」以外のことは何も知らずに観にいった。

主演であるクリス・パインはこの映画の制作にも関わっているからなのだろうが、彼が演じたエドガンは、まさにハマり役だった。戦うのはそこまで得意ではなく、人を元気づけたり頭の回転を生かしたりしている口の達者なキャラクターだが、ただ明るい一辺倒ではないのが魅力を深めている。自分のことを開示するシーンではじんわり泣きそうになったよ……ちょっとした瞬間に葛藤が垣間見えたりと、当然ながら演技は冴え渡っていた。

そして彼は歌が上手いので吟遊詩人*2としての能力も遺憾無く発揮していた。予想外にめちゃくちゃ歌ってくれるじゃん……ありがと……クリパがちゃんと歌ったの聞くの、『イントゥ・ザ・ウッズ』以来な気がする……と思いましたが『スパイダーバース』があった。エンドロールでクリスマスソングを歌っているのは彼です。最初に出てくるスパイダーマンの声優をしているよ。

 

エドガンの相棒であるホルガを演じたミシェル・ロドリゲスも最高!こういう格好いい!強い!みたいな女性キャラクター、恋愛に興味なさそうに描かれてることが多い気がするけれど、駆け落ちが原因で部族から追放されているという設定にびっくりしてしまった。

しかし相手はエドガンではない、というところがこの作品の新しさな気がする。エドガンとホルガの関係は徹頭徹尾相棒として描かれており、誰よりもお互いを理解しているが、それは全く恋愛感情ではない。

こういう男女の関係性の提示を、こういう大作映画でやってくれることに意味があると思っているのでグッと来てしまった。クールで口数が少ないけれど、目配せで(こいつやべえ)とか(大事に思ってる)とかがビシバシ伝わってくるのも、ちょっと好みの人がいて唇噛んじゃうのも、いちいちにっこりしちゃった。そして流石ミシェル・ロドリゲスなので大立ち回りは完璧。まー多彩な戦い方を示してくれるね……というアクションの部分をしっかり支えていた。

 

かつての仲間であり再び加わってくれるサイモン、良き!皮肉屋で使う魔法がいまいち強くなくて、なんならミスも多く、大丈夫か……?と心配してしまうのだけど、取り返し方もまた上手!笑いのオチにも使われがちだったが、そうしたくなるような絶妙さが彼にはある。真顔でおどけてくるの、コメディの鉄板だけどしっかりしてた。そして後半の追い上げよ!主人公属性が一番強いのは彼かもしれない。

しかしすっかり忘れていたけど『名探偵ピカチュウ』の主演だったね。

 

ドリックも好きにならずにいられない!目まぐるしく見せてくれる変身の多さはもちろん、パチンコなどのギミックなどの使い方もいいし、とにかく見せ場が沢山!映画内ではかなりまともで冷静だった。初っ端から出番格好いいし、頭の回転も早いし、人間嫌いと言いつつも手を貸してくれる優しさもあり……!ソフィア・リリスは『IT』リブートシリーズのベバリーを演じてて、彼女も観てる間は観たことある……と思ってたのだけど、観終わってから同行者に教えてもらって叫んだ。

 

エドガンの娘、キーラも良い……どうしてクロエ・コールマンは取り残されがちなんだ……と『ガンパウダー・ミルクシェイク』ぶりの気持ちで観てた。あの時からすっかり大きくなって!と子役にすぐ親戚みたいなこと思ってしまう。要所要所で効かせる役だった。あるシーンの笑い声が凄くて……

蛇足だが、こないだ『ザ・ホエール』でタイ・シンプキンス出てきた時も『ナイスガイズ』の時より更に大きくなって!と感慨深くなってしまった。

 

待ってましたのフォージ役ヒュー・グラント、こういうおちゃらけおじさんの役が似合い過ぎててすっかり見慣れつつあるのだけれど、毎回ちゃんと若干バリエーションを変えてくるので、新鮮味もちゃんとあるという不思議な感じ。それにしてもペテン師って言われてるの凄いな。悪役がバッチリハマっていて、しかし口から出てくる言葉が嘘だけど本当にそうも思ってるんだろうなという説得力が強烈だった。ああいうキャラクター、それなりに愛着や大事に思う気持ちがゼロではないけれど、自分のやりたいことのためにパッパと優先順位をつけてそのためなら切り捨てていく、の描写がうまい。好きじゃん。

 

そして聖騎士ゼンク・エンダー!この人が完全にノーマークだったのでびっくりした。出てきた瞬間から光ってたし、魅力的なムードを醸し出しまくりで凄まじかった。そして真面目でセクシーなのが一周回って面白いという新境地を知る……どうしてこういうキャラクターが生み出せたんだろうか。最高だった。

 

他にも大変な苦労を被りまくってるソフィーナやジャーナサン、確実に過去の因縁を匂わせてくるドララス、助けられてたエルフなど、メインの悪役からワンシーンしか出てないキャラクターのみんなが大好きになってしまう。こういう両手を上げて喜べる映画を観たのが本当に久しぶりだった。

 

世界に没入出来る

風景がまー良かったね……ミッションが多く、西へ東へ北へ南への大移動を行っているのだが、目的地の世界の広がり具合は勿論のこと、合間合間に挟まる風景が美しくて!草原や渓谷や山などを、馬に乗って駆けていくの、ちょっと『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ思い出したよ。雄大で圧倒的な自然の中に、ひとびとの生活があるがあることが分かる。こういう風景を映画として楽しめた。

また、墓地や地下世界などのダンジョン、栄えて活気のある街も作り込みが良かった。行き交う人々は勿論、不思議な店やちょっと変わった生き物たち、謎に満ちたモチーフの石像、とにかくいろんなものが溢れ返っている。原作がゲームなので、直接は関係なくともちらっと映った何かにテンションが上がった人も多かったのではないだろうか。もっとも、知らなくてもわくわく出来る画作りになっていた。

 

 

気づいたら3回観に行っていた

この数年、映画館に行くのも考えつつ、しかし確実に回数は増えていたけれど、同じ映画のリピート鑑賞をしたのは、『NOPE』以来である。

……と書くといや去年もやってるじゃん、となるのだが、2020年以降『NOPE』と『ダンジョンズ&ドラゴンズ』だけで、3回も観た映画はこれだけだ(『NOPE』は2回)

元々あまり映画館でもリピート鑑賞はしない方なのだが、「今この瞬間に!観ておかないと!」という気持ちで映画館に引き寄せられていった。寒々とした監獄から始まる映画に、毎回ワクワクしては細かい部分まで魅せられ、キャラクターたちの選択に泣いていた。こんなに楽しませてくれた映画、今年は今のところ他にないよ!すっかりKOされている。本当にありがとう。

 

 

映画館に行ったら、スタンディングがあって楽しく写真を撮った。

私の前に小学生くらいの子と保護者の人が写真撮ってて微笑ましかった。いい思い出になってたらいいなと思う。

 

 

*1:スター・トレック イントゥ・ダークネス』来日プレミア時。クリパは私が生まれて初めて会った海外俳優である。自慢です

*2:本国の設定としては吟遊詩人とされているが、日本の公式では盗賊として紹介されている