熱に羽化されて

好きすぎてこじらせたうわ言や思考の整理など

ウォルター・メイブリーという男について(『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』感想ネタバレあり)

ダニエル・ラドクリフモンペ、ウォルター・メイブリーについて語る。

ふせったーでつぶやこうと思っていたら文字数制限に引っかかったのでこちらの投稿します。
最初から最後までウォルターとダンの話しかしていません。
真面目な、というか全体的な感想はまた別の機会にこちらにアップできたらいいなと思います。

という訳で肝心のダニエル・ラドクリフ初の悪役ということだったのですがすんごくキュートで最高でしたありがとうございました。
どこか小悪党抜け切れてない感じですが凄く良かった。

 

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このダニエル・ラドクリフがフォー・ホースメンを手玉に取っていると言わんばかりのポスター、日本版でしか見なかった気がするんですけどKADOKAWA様本当ありがとうございます!

 

ウォルターについて(ネタバレあり) 

まず予告編での出落ち感溢れる登場シーンが初登場なんですけど、あの「ジャジャーン!(TA-DA!)」は勿論最ッ高に可愛いんですが特筆すべきはその下。
足です。
なんと裸足なんですよ!
それだけで萌えるのに靴を履くシーンでモンペ号泣ですよ。足をぎゅっぎゅと靴にねじ込んでる姿観て、履けてえらいね…!って泣いてた(ダンは協調運動障害持ちなので靴紐を結ぶのが得意ではない)
この最初のシーンでは、かつて組んでいた筈の相棒に裏切られて密かに怒りを燃やしている悪の天才として描かれています。この辺の裏切りの話あたりはちょっとソーシャルネットワークっぽさを感じた。二人共若い会社だろうから余計に。相棒に情緒不安定だと言われて役員総会で締め出しを食らって…ってどんな奇行を働いていたんでしょうか。気になる。スピンオフocta待ってます。創業から頼む。オーウェン・ケース現CEOの出会いからみっちりやってほしい。多分ウォルターの家のガレージから会社がスタートするやつでしょ!?(それはアップル)

ついてきて!って言ってもついてこないフォー・ホースメンを手下使って無理矢理ついてこさせたりとか、ここは僕が話したいの!とむんずとウディハレちゃんの顔をつかむ所とか、無邪気で言うこと聞かない奴は嫌い!という子供っぽさに溢れてて可愛かった。あと小さいネタいじられてて笑った。小さいよねやっぱり。知ってた。ネタばらししたい!ここが楽しいところなんだよ!ときゃいきゃいしているのはマジシャンというよりは名探偵を気取りたい感じがあった。

そしてぎゅうぎゅうに詰めたソファで突如として見せられる問題のマカオ旅行!
「Our trip in Macau」のタイトルが出てきたと思いきや始まったスライドショーの数々に悶絶。寝ているフォー・ホースメンの横にウォルターが写り込んだ写真たちがまあかわいいこと。ダニエル・ラドクリフが中指立ててるの初めて見た気がします。もし見たことあるよ!という方がいらっしゃったら教えて下さい。実はこの写真たちSNSに流れてたので先に観てたけど、全部じゃなかったので良かったです。あれ凄くはしゃいでてかわいい。コマ送りにさせてほしい。円盤早く。

というか1年前に死んだということになってから、多分ウォルターはずっとマカオに潜伏していたと思われるのでフォー・ホースメンお迎えに行くためだけに飛行機往復した可能性があるのですが、馬鹿じゃないの…?多分オクタ社のプレゼンには顔が割れているのでそこに乗り込んでは行かないと思うのですよね。あそこでジャックの生存とディランの存在を暴露するのにカメラ大写しをするので、そこに万が一、同じく視認であるはずのウォルターが映ったらまずいことになる。だから彼は飛行機を降りていないか、もしくは降りたとしても長い間NYに滞在はしていないと思われる。

だからマカオからNY直行だとしても16時間かかる(本来はマカオの直行便はなく、香港の乗り継ぎでしか行けません。香港-NY間が片道約16時間弱)ので、あの4人(+1人)のために32時間も飛行機乗ってたことになるんですよ…馬鹿じゃないのかな…そりゃはしゃいであんな写真を撮るわ。というか皆寝てる中一人暇だから延々と遊んでるがな。スライドショー作る時間は腐るほどあったよね…音楽つけたりね…暇かよ…
自分のものを取り戻すのにお金があるんだから落札すればいいじゃないか、とジャックに言われたのに対して「落札?大金を積んで喜ばせるのか?」という言葉にケースに対するウォルターの激しい怒りを感じた。おちゃらけてきゃぴっとした悪役だったけど、あの瞬間の凄みだけは他とは全然違った。後でもちょくちょく凄みは出すんだけど、ここの真顔は本当怖い。

しかしその直後に言うこと聞かないと殺しちゃうぞ☆となんとも軽い口調で言うの最高!ああいう悪役大好きなんですよね。
続けて「マカオの警察・マスコミ・政治家は全部僕の支配下だから」ってもうマカオの闇の王じゃないですか!一国の王じゃん!自分が死んでいることにより、最強の匿名性を手に入れたんですよねウォルターは。だから影の支配者となってマカオも牛耳れた。本当はその辺で満足しておきなよ!でも一度会社で世界を支配できるようなチップを創り出したのだから、もうこの程度の規模じゃ済まないわけですよね。特別行政区一つでこの程度の規模って言うのもどうかと思いますが…この話はとにかく世界の規模が大きいからね!

 

しかし「じゃあよろしく☆」とホースメンに無理難題頼んだ後はしばらく出てこなくて、たまに上から見下ろしてるだけだからあれー物足りないなー!?という気持ちが…正直…もう少し出てきてもいいのよ…
でもダニエルを罠にハメて現れた時のハローハローとか、一々無邪気で可愛いんですよ…こういうタイプの悪役大好きなので本当に嬉しかった。
自分では戦わないんだろうなとは思っていたし実際ずっと部下に指示していただけだったのですが、まさかラファロに一発食らわせるとは思わなかった。止めは自分で刺す!背後から瓶で殴ってただけだけど。
そういやこの市場で戦うシーン、現れた人間が実はガラスに映った姿だった!というトリック、最近シャーロックやヴィクター・フランケンシュタインでも見かけました。流行りかな?

その後の展開で、ウォルターがただ単にフォー・ホースメンを目につけていたのではないことが発覚。彼の父親が前作フォー・ホースメンのパトロンであり、裏切られた大富豪アーサー・トレスラーだったのです。ここからウォルターは自分の私利私欲のための復讐だけでなく、父親が受けた屈辱の復讐を同時に果たそうとしていることが分かります。アーサーは保険会社を経営していますが、保険が下りるはずの人たちにお金を払わなかった悪人です。今回もその悪役っぷりは健在。
ウォルターが「僕は父と強い絆で結ばれている」と言い出した後にアーサーが「私の息子だ。非嫡出子だが出来がいい唯一の子」と言い出してびっくりしました。だから苗字が違うのですね。メイブリーは母親の姓なんだろうな。
ちなみにアーサーにはなんと嫡出子が7人もいるとのこと。子沢山!その割にこの親子仲睦まじいな…ちなみにウォルターは「Dad」呼びしていました。かんわいい!

その後のディランを金庫に沈めるシーンは最高に悪役でした。顔近づけての演説良かった…!君と僕は父親に執着している点が似ている、と言いながら父親との一番辛い思い出を的確にえぐってきます。ラファロにそんな酷いことするのやめてよお!と思う一方もっとやって!悪役っぷり発揮して最高!という気持ちに引き裂かれてながら観ていました。
金庫を沈めるタイミングを父親に譲るのも、ウォルターがアーサーを尊重しているのがよく分かります。作戦成功した後に二人で紅茶を飲んでいるのが英国人のテンプレートのようで笑ってしまった。
しかしここからがフォー・ホースメンの頑張りどころ。逆にウォルターは追いつめられていきます。フォー・ホースメンがこれから「死人をよみがえらせる」、つまりウォルターの生存を暴露する、の動画がインターネットに流出して以降は、余裕がまったくなくなっていきます。ちなみにあの動画見るシーンでも裸足でした。基本室内では裸足なんですね。日本においでよ。

後半の目がうるうるるんなところとかもうたまらなくて仕方なかった。顔色もどんどんけそけそしていくし、落ち着きがどんどんなくなっていって、ひたすら首の後ろをかいたりしている。
また、アーサーも同じく余裕がなくなっていくので、ウォルターへの態度がどんどん冷たくなっていくんですよね。

最後の高級なシャンパンをアーサーとかんぱーい!してからの「これこんな味したっけ?」は見事に罠にかかってて可愛かったです。そんな高級な飲み物飲んでたのか…まあ当たり前か…
結局彼はフォー・ホースメンに見事騙されてしまいました。一度はフォー・ホースメンを完全に殺したと思ったものの、それ自体が彼らのマジックの一部でした。一番恐れていた、「実は生きている」ということもバラされ、父親に警察に捕まってしまいます。
こうして映画はハッピーエンドで終わるのでした。

 

引っかかったこと 

全体的に悪役としては素晴らしく良かったのですが、いかんせんもうほんの少しでいいから出演量が多くても良かったかな。後半ちょっと尻すぼみ感あった…
そして予告で散々「マジックvs科学」みたいな煽りをしていた割にはその対比がうまく描かれていなかったかなと思いました。トランプをリレーしていくようなシーンは彼らの手先の技術と仕込みの力あってこそ!と思いましたが、フォー・ホースメンのマジックだって、テクノロジーや機材に頼ってる面は大いにあるんですよね。それはウォルターもフォー・ホースメンもあまり変わりがないように思えました。そうするならもっとウォルター側がマジックをやっている傍からガンガン種明かしをしたりとか、もっと科学的なアプローチをすればよかったのにと思います。
あれだとただ頭が良いらしいけれど、権力とテクノロジーを持ったただの男に見えてしまう。
中盤でウォルターの台詞「Science beats magic.」も、それはただダニエル・ラドクリフに言わせたいだけですよね?という感じがあった。

 

 ウォルターの人生について

しかし彼の人生を考えるとなんというか泣けてきて仕方ない。
会社の相棒には精神不安定と指摘され遠ざけられ、にっちもさっちもいかなくなってしまったので死んだことにして自分は匿名=表には決して明かされない存在として生きていくことを決めたのは悪役の浪漫のようでもありながら、なんだか切なさを覚えてしまいました。
一番つらかったのは最後のアーサーとのやりとりです。捕まっても尚「父さん、僕が何とかするよ」と悪あがきをしつつ父を支えようとするウォルターに対して、今まであれだけ「親というものは子供の欲しいものは手に入れてやりたい」だの「できの良い息子」だのと言っておきながら、自分にとって使えないことが分かるや否や 「父親と呼ぶな。母親なんて誰だか分からん」と言い出すんですよアーサーは。 ウォルターと一緒に呆然としたよね… 最後この台詞の後に「What?」とウォルターが聞き返すんですが、字幕では訳されていませんでした。
今まで自分のためでもあったけど、何より父親のために頑張ってきた筈なのにこの仕打ち…

きっと父親とはずっと仲睦まじかったわけではなくて、ずっと なんとか自分を目に留めて欲しかったからなのか 、頑張って自分の力でエンジニアとして努力していた所に前作の事件が起こり、この機会にと他の子たちにはない才能や努力を提示してやっとあの場所に立てたのかな、と思う。
会社作ったりしたのも、全部父親に認められたくて必死だったからなんだろな…
最初の登場シーンで白スーツなのも、父親の格好を意識しているのかな。前作でもアーサーの初登場や、公の場では白スーツなんだよね。でもアーサーが白スーツを着ている時は、ウォルターはおそろいは着ない。多分、着れない。
終盤、フォー・ホースメンからチップを手に入れ起動する時に、入れたキーワードが「DAD」なんですよね。あれも泣けてくる。

そして明らかにウォルターが命名しただろうキーワードから推察するに、会社は一緒に立ち上げたけれど、あのチップを作ったのはほとんどウォルターだったんじゃないかなと思いました。
また、ウォルターが立ち上げた会社がocta社で、新商品がocta8という製品だったのだけれど、ウォルターって多分8番目の子供じゃないですか。 というのも、アーサーと(演じる俳優マイケル・ケインとも)の年齢差を考えると7人の嫡出子の後の最後の子供かなと。そしてoctaには8の意味があります。彼にとって、8は多分自分の数字なんですよ。
だから会社も新商品も、自分の分身だったわけです。それを横取りされていたら、そりゃあまず復讐に燃えるわけだよ。

この辺に私はすごくブレイキング・バッドを感じていました。(私は何かとすぐブレイキング・バッドの雰囲気を感じ取るので気のせいと思って読み飛ばしてくださって結構です)
名前が「ウォルター」なのは勿論だけれど、理不尽な状況に追い詰められて友人と作った会社を自分だけやめされられるところ。幸いにしてこちらのウォルターが貧困にあえぐことはなかったけれど。
だから彼はマカオで孤独な王様のままでいれば良かったのに…とも思わなくもないのですが、一度死んだことにしてしまった以上、ずっと脅威にさらされ続けて行く羽目になるんですね。困難な人生を選ぶなあ。
誰か彼を幸せにしてあげてください…とりあえず父親は糞野郎だからさっさとファザコンやめなさいよ!
お友達が「実は生きていたラファロ父に弟子入りして擬似親子関係になり、ラファロを嫉妬させる」という案を出してくださったのでぜひともそちらを採用していただきたいです。3の製作は決定しています!ダンは出ないと思うけどやったね!

 

ダニエル・ラドクリフについて

彼自身に関して言えば、何故再びビッグバジェット映画のシリーズ、そして悪役を引き受けたのだろうとずっと思っていましたが、観てなんとなく分かったような気持ちになりました。
ウォルターという役は彼のキャリアに必要だった、というか、当時の興味がまさに<Privacy>であったのだな、と痛感しました。この世のすべての人のプライバシーを侵害するチップを作り出し、それを悪用しようとするキャラクターを演じたことは、彼にとってのプライバシーとは何ぞや?ということを我々に問いかけているような気がしています。
これの直後に舞台「Privacy」をやっていることが」まさに彼の興味を物語っている…プライバシーを脅かす側、脅かされる側をどちらも演じているんですよね。
それは幼い頃からずっとプライバシーを侵害されっぱなしで生きてきた彼ならではのアプローチに思えました。何故私は7~8月にNYで舞台を観に行けなかったのか、悔やむばかりです…

 

なんにせよ、初の悪役は大変良かったので、今回に限らず多くの役に挑戦して欲しいです。主人公のサポート役とか、ゴリッゴリの悪役も勿論。主役なのは嬉しいことこの上ないですけどね!
次に日本で公開されそうなのは何かあまり見当がつかないのですが、今はグランド・イリュージョン2がスクリーンで観られることを堪能しようと思います。
とりあえず4DXを満喫するつもりです。前作でも韓国ではやっていたけれど、日本ではまだ名古屋にしかなかった頃だったので。
こんなに公開規模が増えて本当に良かった。大ヒットしますように。

 

 

 

 

---以下妄言---

 

本当に誰かウォルターを幸せにしてやってよ…あの元相棒のCEOとは無理だよ…と思った結果、
獄中でハリー・オズボーンと出会ってドクター・オクトパスとしてインフィニティ・シックス加盟して黄昏の王国を築いて欲しいということしか浮かびませんでした。octaから派生してドクター・オクトパス。科学者だしね。
生まれて初めてクロスオーバーに走る人の気持ちが分かった。
撮られる予定だった映画の話をして泣いてたりはしてません。してないってば。

 

さよならなんて、言いたくない(アントン・イェルチンオールナイト)

 アントン・イェルチン追悼特集

本当のことを言うと、こんな日を迎えたくはなかった。 

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新文芸坐オールナイト「さよなら、アントン・イェルチン 君が行きた証」に行って来た。
約2ヶ月前に事故で亡くなったアントン27歳の。早過ぎる追悼上映だった。


彼のことは『スター・トレック(2009)』で知った。
ロシア訛りを話す天才的な頭脳を持ったメインクルー最年少、パヴェル・チェコフ少尉を演じていた。すごく柔和な雰囲気と知性を兼ね備え、フレッシュさを感じさせる青年と少年の中間のような人だったことを覚えている。
そこから何作か観ていて、どれも素敵な映画に出ている俳優だと思った。大作からアート作品まで幅広く出演しているようで、出演作をすべて観ている訳ではなかったけれどそれなりには追いかけていた。

突然としか言いようのなかった彼の訃報は、深夜に妹に叩き起こされて知った。
彼女は動揺して一人で抱えきれずに私を起こしたのだが、私は寝起きの頭では何を言われても頭に入ってこなかった。寝ぼけ眼でTwitterの画面をスクロールして、次々現れる断片的な情報を読んで、何を言っているのかさっぱり分からなかった。彼が陥った状況があまりにも不可解で、これは事故ではなく殺人の可能性があるのでは?と思っていた。というかそもそもガセではないのか?本当の事って何処にあるの?

スター・トレックの新作のプレミアツアーが始まる直前の話だった。
これからのプレミアは?チェコフ抜きでやるの?そんなことってある?
全然信じられないまま眠りについた。起きたら寝ぼけてたんだよって言って欲しかった。

 

起きても全然現実は変わらなかった。
相変わらず信じられない、という言葉が飛び交う中で、彼が車の事故で亡くなったという事実はそのままだった。
これからどうしたらいいのか分からなかった。
ただ、スター・トレック/ビヨンドを観るのが、ものすごく怖くなった。
あれだけ公開が遅れたことに怒っていたのに、7月にすぐ観なくちゃいけないと思うと、全然心の準備が出来ないと思った。

 

そんな時に決まったのがこの企画だった。
すぐに行こうと決めた。オッド・トーマス以外は未見だった。
スクリーンでアントンの作品を観れる機会は、これからずっと少なくなっていく。
今待機作がそれこそスタトレがあるけれど、彼を観れる機会があるなら、出来るだけ多く行くべきだ。
3年前、ポール・ウォーカーが亡くなった時も同じことを思った(彼が亡くなってからもう2年半も経っている!これだって信じられない!)

そうして13日の夜、新文芸坐に久々に来た。

 

映画あらすじ&感想(ネタバレあり)

『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』

唯一鑑賞済みだったのだけれど、今回これを観るのが一番怖くて仕方なかった。

この作品は「死者が見える」ちょっと変わった青年が、自分の街と恋人を守るために奮闘する話だから。
オッドは悪霊には立ち向かっていき、殺された人には優しく寄り添ったりする。
最初にアントンの姿が見えて声が聞こえただけでもう駄目だった。ぼろぼろ泣いていた。
これまで意識的に彼の姿をあまり観ないようにしていた。
観たら、否応がでも彼のことを考えてしまうから。
畳み掛けるようにして、序盤から殺された12歳の女の子に対してオッドは言う。

「心配ないよ。君がこれから行くのは魂の家で、優しさと驚きがあふれている所だ。
 かわいそうに、短い人生だったね」

この台詞は、まさにアントンに言い聞かせるように聞こえてしまって、駄目だった。声を出さないようにして、わんわん泣いてしまった。

話自体はとてもスリリングで、溢れる謎や襲ってくるかいいから軽快にオッドが逃げていくので、とにかく楽しい。
悪霊などが出てくるシーンなどは、割とホラー要素もある。
南カリフォルニアの砂漠がすぐ近くにある小さな町で、オッドは何かとてつもない殺戮が起こる前兆を感じる。
そして本当に起こり始めるおかしなことを照らし合わせながら、オッドは自分の能力を使い殺戮を防ごうとする。
登場人物が皆魅力的なので、彼らの掛け合いがたまらなくおかしい。
特にオッドの恋人のストーミーが最高だ。幼なじみでオッドの能力を知っていても、彼と常に共にいる。
強くて格好良くて優しくて素敵な人だ。このカップルがとてもとても好きで、ベストカップル賞を上げたくなる。
そして、オッドを信頼する警察署の署長がウィレム・デフォーという安心感。
ラストもやっぱり泣けるんだけど、爽やかに終わる快作。
監督が『ハムナプトラ』シリーズや『G.I.ジョー』を撮ったスティーヴン・ソマーズなので、安心して観られる。
Huluで配信しているので、加入している方はこの機会に是非。
ちなみにまさに8月14日から15日にかけての映画なので、今週に見るといいかもしれません。


『ゾンビ・ガール』

B級ゾンビコメディ映画!
これが今回思いがけずに素晴らしく面白かった。
オカルトマニアのマックス(アントン)は菜食主義者の彼女と付き合っているけれど、どこか自分とは合わないと思って別れを決意。
しかしその矢先に彼女が事故で死んでしまう。
失意の底にいたが、新しい恋を見つけた矢先になんと彼女がゾンビになって帰ってくる!?
もう死んでいるからこれなら永遠に一緒にいられる!と喜ぶ彼女にマックスはどうしたらいいのやら…
彼女と新しくいい雰囲気になる女の子の間で、奇妙な三角関係のようになってしまうマックス。
自分の意見を伝えようとするも、ゾンビになった彼女を怒らせると恐ろしいことになってしまう。
ゾンビあるあるネタ満載、でもそんなに怖くはないのでげらげら笑って観ていられる名作です。

 

ゾンビ・ガール [Blu-ray]

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『ラスト・リベンジ』

老練スパイニコラス・ケイジ、前頭側頭型認知症(FTD)と診断されCIAを離れるも、自分が生涯追いかけ続けた敵が遂に姿を表しそうになり、秘密裏に追いかけていく。
こちらはアントン主演作ではなくニコラス・ケイジ。アントンは色々覚束なくなっている主人公エヴァンをサポートし、内緒で協力してくれるCIA職員ミルトンの役でした。
いいバディもののようでもあり、父親を介護する息子のようでもあった。
というのもミルトンはかつてCIAの任務で、本部に見放されるような失敗をしてしまった時に、エヴァンだけが彼を見捨てずに祖国へ返してくれたという恩があったのです。
ずっとエヴァンが追っていた敵の事も知っており、彼のために甲斐甲斐しく世話を焼き、サポートに徹します。
これも大変面白かったです。ニコラス・ウィンディング・レフンが製作総指揮だったのでどんなもんじゃろと思ってたんですが、カーチェイスバイオレンスも良かった!
スパイが認知症になったら…という設定がとにかく面白かった上に、一本の話がしっかりと進んでいって、良かったです。

ラスト・リベンジ [Blu-ray]

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『君が生きた証』

今回のオールナイト特集のタイトルにもなっていたこの作品。
息子を亡くした父親が、彼の代わりに歌を歌うらしい、という薄ぼんやりなことしか知らずに観ていたら、予想もしない展開に呆然とした。途中からどうなるのかも全然分からなくなった。
まさに原題の『RUDDERLESS(舵のない船)』の気分を味わう。
アントンは主人公サムの歌を聞いて惚れ込み、一緒に歌おう!と持ちかけるバンドマン、クェンティンを演じている。
普段姿勢のいいアントンがこの役ではものすごい猫背で、クェンティンの自信のなさが漂う演技がすごいと月並なことを思った。
ぐいぐい来てはおしゃべりがやめられない、でも礼儀正しい面も持ちあわせており、人を寄せ付けなかったサムも、段々心を開いていきます。
初めて二人が歌った瞬間は「アントンはバンド活動もしてたんだよな…」と思ってからまた泣きっぱなしになる。
ライブシーンがとにかく楽しそうで、だからこそ余計に涙が止まらなかった。
この映画の最初にかかるのが「ASSHOLE(馬鹿野郎)」という曲で、行きずりの彼女と別れてごめんねバカで、みたいな歌なんですけど、最初の歌詞が

「さあ、別れの時が来た
 忘れられない最後にしよう
 君と別れるのはいつだって楽しい」

全然楽しくないよ、どうしよう、この映画が終わったらサヨナラを言わなきゃいけない、と考えてしまって入り込めるのかどうか不安になるくらいだった。
けれどこの映画は気づいたら息をするのも忘れるくらいにのめり込んで、衝撃を受けて、楽しくて、ぐっと胸に詰まった。
本当に良かったなんて言葉では言い表わせない傑作。この作品を音響の良い新文芸坐で観れたことが、奇跡のように感じた。
エンドロールでもアントンの歌声が聴こえてきたら、もうそこからは泣いて泣いて仕方なかった。
終わってから、監督がバーのマスター役を演じていた俳優 ウィリアム・H・メイシーで、彼のデビュー作だと知った。
凄まじい人だと思う…こういう形でもっと作品を撮って欲しいし、演じて欲しい…

 

君が生きた証 [DVD]

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DVDしか日本で発売されていないのが、信じられない。

 

 


場内が明るくなっても、暫く立てなかった。
終わってみて、オールナイト上映で初めて一睡もしなかったことに気がついた。
4本くらいあると大抵1本は観たことがあって、それでだいたいうとうとしたりしてしまうのだけれど、この日は全く無かった。
オッド・トーマス以外は初見だったからすごく心配したんだけど、とてもきちんと観れていた。
あと全然関係ないですが、隣に座っている方がとんでもなくいい香りがしていて、鑑賞中とても良い気持ちで鑑賞できていた。オールナイトで映画観る時は、常に隣に座っていて欲しいと思うくらいいい匂いだった。最高。

 

改めて記すけれど、アントン・イェルチン、作品の選眼がありとあらゆる俳優の中でトップクラスだと思う。
面白い脚本を見つけ、自分のことをきちんと理解していて、最も魅力を引き出せる役を選んでいる。
出演している作品、今まで観た中でつまらなかった作品が一本もない。これってすごい才能だ。
まだ観れていない彼の作品を、全部観終わってしまうのは勿体無いと思ってしまうので、家でBlu-rayとかで観るならゆっくりと観ていきたい。
ショーン・パトリック・フラナリーと共演作『約束の馬(原題:Broken horses)』が、気づいたら配信スルーになっていたのでこちらを観ようと思ったが、内容がなかなかに重そうで観るのに覚悟が入りそう。
この作品でもアントンは音楽家を目指していた。つくづく音楽が好きな人なんだと思う。

 

 

 

 

 

 

ああでもやっぱり、『スター・トレック/ビヨンド』を観るのが怖い。
もっと怖いのは、ビヨンドの続編が作られるのが決定したこと。
彼の代役は立てない、とJ・J・エイブラムスが言っているのでそれはとても安心した。
けれど一方で、新しい作品が作られたら、どうしたって彼の不在を見つめなくてはいけないから。
わがままが叶うなら、スター・トレックのこのシリーズは、ビヨンドで終わりにして欲しい。
こんなこと書くのは酷いと思うし、もう続編は決定しているらしいのでどうしようもないけれど。

アントンの演じるチェコフがいるスター・トレックを、もっと、ずっと、観ていたかった。
去年レナード・ニモイが亡くなって、TOSのメンバーがどんどんいなくなってしまう…と思っていたばかりだったから。
だからAOSは、TOSに負けないくらい、映画だけでなくてなんならそれこそドラマに移行したりしてもいいな、3シーズンで終わらないくらい、長寿のシリーズになっていけばいいな、って、思っていたのに。
嫌だよアントン。本当は綺麗な発音が出来る君の、酷いロシア訛りを聴きたいよ。
もっと演じて欲しかったし、もっと歌って欲しかった。もっと生きていて欲しかった。
大好きだよ。今までも、これからも。
今はまだ、さよならは言わない。そんな言葉、言いたくない。

 

「選挙」で思い浮かぶあれやこれや

参議院選挙に行って来ました。
期日前投票をしている人たちが多くて、なんでだろうと思ってたんですけど、あれだね、せっかくの休日を選挙で潰さないためだね…
期日前投票しとけば今日夕方から遊べたのになあ、早い内に忘れる前に投票行っとくべきだった、と痛感。
学校を出てすぐ目の前の家が、クリームイエロー、空色、ハロウィンオレンジ、と三軒並んで壁を新しく塗り替えていた。なんだか背筋が伸びたので、そのままブログを書いてみた。

 

 

投票用紙のユポ紙が話題になっていたけれど、私がこの言葉を初めて知ったのはトミヤマユキコさんからだったと思う。大学時代の話だ。それを聞いた時はまだ選挙権を持っていなかった頃だったので、へえ~そんな紙があるんだーと聞いていた。
トミヤマさんといえば、今こんな連載をしていたので紹介しておく。

まだちょっと遠いけど、刺さることが多々あった連載。

私は親の子宮にファッションセンスを落としたまま生まれてきたので、こういうのすごく共感してしまう。
実際に着ているのを見た服があると、なんだかドキッとしてしまう。

 

 

 

紙、といえばもう一つ。
毎回投票に行くと投票証明書をもらって帰るのだけれど、私の行く投票所ではいつもレザック紙に印刷された証明書が渡される。色は毎回違う。
これをもらうきっかけは、投票証明書を持って行くと飲食店などでサービスを受けられるから、という記事を新聞で読んだからなのだけれど、結局一度もサービスを受けたことがない。
ただ、ちゃんと毎回行ってるな、という確認のために、映画のチケットと同じように、その日付の手帳に貼り付けている。映画も投票も日常だ。

 

 

投票を済ませる帰り道、いつも私の頭のなかではモーニング娘。の「ザ☆ピ~ス!」が流れていく。
ハマっていた人ならすぐにピンと来るとは思うのだけれど「選挙の日ってうちじゃなぜか 投票行って外食するんだ」というフレーズがあるからです。明るく楽しい女の子たちが歌っている曲の中で、そのフレーズだけが妙に異様なようでいて、それが日常であるという馴染み深さに斬新さを覚えていたような気がする。
今歌詞を見返してみると、視点がマクロとミクロを繰り返しながら、女の子が日常を愛して生きていくようなイメージを持った。
でもしょっぱなから「YO~ほら行こうぜ!そうだみんな行こうぜ!」なので、やっぱり投票に行こう!という催促ソングなのかもしれない。政治的な一面があるようなないようなこの歌を、私は未だに歌える。


探したら公式がMVをアップロードしていたので、こちらも載せておきます。
うわー懐かしいメンバーしかいなーい!今のメンバーはほとんど分からないけど、新曲の「泡沫サタデーナイト!」はつんく作詞作曲じゃないのにすごく懐かしいこの時代のモー娘。感があって好き。
ちなみに選挙の日、ここ何回かはいつも外食してない。
今日の夕飯は餃子と鯖のみりん干しだった。最高にビールが合う食事だった。

 

選挙だと小学校や中学校に合法的に入れる!という言葉をネットで見かけたりするけれど、そんなに普段入るタイミングがないのだろうか、といつも不思議に思ってしまう。
というのも、区民のために開かれた、学校の図書室とは別の図書室が投票所である母校にあるからなのだった。
その気になれば週一で通うことが出来る。
中学時代、この図書室と学校の図書室にすごくお世話になった。私が読んだ児童文学の大半はこの二つの図書室にある蔵書たちだ。
ここは子供向けの児童文学と、大人向けのベストセラーでほぼ埋まっている。区民の交流や読書推進のためにある小さな図書室なので、そういうラインナップなのは納得している。というか、大変ありがたい。普通に区の図書館で借りようと思うと延々と待つことになるので。もうあっさり買った方がいいとも思うのだけれど。
そしてこの図書室には未だにお世話になっている。
三浦しをんのデビュー作があってうっかり借りてしまったら、大学時代のまんまの私がいて(家庭内事情は流石に違うけれど、姉という点も同じだ)、現状とも重ねてものすごくえぐられた。
三浦しをんの本は読むたびにどこかしらが懐かしくて自分の見たくない部分を否応がにも突きつけられて辛い思いをするのだけれど、読むのをやめられない。
しかしこのデビュー作を書いた当時の三浦しをんと、自分が今同じ年齢と気づいて軽く絶望した。
どうなりたいんだよ、私…大人にすらなりきれていない…

 

都内最大級IMAXスクリーンを体験!(T・JOY品川PRINCEシネマ行って来ました)

https://www.instagram.com/p/BHRnGHgBRxC/


我慢出来ずに行ってきちゃいました。
かつて都内に存在したと言う品川IMAXの復活と聞いて、しかも上映されるのが大好きな『インセプション』とくればもう行くしかなかったんですけどね。

 

駅前の品川プリンスの映画館って、普段使う映画館としては今まで完全スルーを決め込んでいた。唯一行ったことがあったのは『ワン・チャンス!』のプレミアのみである。
品川駅高輪口(たかなわぐち)を出て目の前にWingの中を突っ切って坂を登るともうそこは映画館である。ここまで信号に引っかからなければ5分で来れる。近い。交通の便は素晴らしい。
そこから映画館に入ってチケット発券すると、発券した場所から左側のエスカレーターを登る。
IMAXシアターは他の映画館とは違い、アネックスタワーの6階にある。途中でコンセッションもなかった気がするので、何か飲んだり食べたい人は買ってからエスカレーターを上った方が良いです。
(※コンセッション、IMAX内にもありますと指摘受けました。ありがとうございます。わざわざ3階で買わなくて良かった)

ここから完全に隔離されていく気分を味わいながらようやくシアターに辿り着く。細長い、片側一面がガラス張りの廊下とか歩く。ここまでがちょっと長いので、時間には余裕を持って行った方がいいと思う。

シアターに入った瞬間、私達と後ろにいた男の人達が揃って「わあ~っ!」と感嘆の声を上げてしまったのが印象的でした。
それくらい大きかった。壁一面のスクリーンは、私たちに迫るようにしてそびえ立っていた。

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一番後ろまで行って撮ってみた写真。

ギリギリスクリーンが収まるか収まらないか、くらい。比較対象が映ってないから大きいかどうかが分からない…

 

大阪エキスポシティや成田HUMAXに比べると少し足りないが、ここは東京、しかも23区内である。旅行をしないと味わえないサイズだった。
しかもこの劇場のいい所は、傾斜がかなり急なので頭かぶりがまったくしない!これはストレス少ない!
上映が始まってから、発色が物足りないような気がしたんですが、それは黄色みがそんなにうまく出てなかったのかな―という感じがした。私の目の感覚なので他の人の意見も聞いて欲しい。というかもっとIMAX比較記事とか皆ガンガン書いてくれ。
あと音響も、立川シネマシティとかに慣らされてしまったためかもっと強くていいんですよ!という気持ちになる。

しかし久々に観た『インセプション』は、それはそれは素晴らしかった。
何階層にも下りていく夢の世界はたまらなかったです。
前から3列目で観たのですが、ギリギリ収まるかどうかというくらいの感じだった。幸せ。
というか今回かなり客入りが良かったのだけど、インセプションだったからなのか、品川復活おめでとう記念だったのかは、ちょっとよくわからない所だった。前としまえんでリバイバル祭りやってた時ってかなり人少なかったイメージだけど。
あれのお陰で私はアバターを劇場で観ることが出来た。本当に素晴らしい体験だったありがとうございます。最近足伸ばしてなくてごめんね(片道2時間…)

 

とか思っていたら、やっぱり新作でも味わいたいと思って、2日連続で来てしまいました。

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こちらがシアターの入り口。

動線はそこまでよくないけれど、観終わった後の出口が入り口とは違う所から出されたので、休日の混雑には多少緩和され…?


観て来たのは『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』
前作が映画3D初体験という作品だったのですが、その時とにかく画面が暗くて暗くて、しかも3Dの要素がろくに感じられないという散々な体験をしました。話も面白くなかったし…
しかし今回IMAXなら、ティム・バートン製作のあの毒々しいまでの色彩を味わえるのではなかろうか、という気持ちと、アラン・リックマンの声が聴きたい気持ちから観に行きました。

 

結果、大正解。

色彩最高!ビューティフォー!もう本当良かったよ!
映画も予想していたよりずっと面白かった!情緒不安定だったのもあってじゃびじゃび泣いてしまった…
黄色みよりも青の発色がいい映画館でした。サシャ・バロン・コーエンの青い瞳がバチバチと明滅するのが大変美しくて良かった。あの人あんなにかわいかったっけ?と思うくらいかわいかった…

 

都内の行きやすい所にこんなIMAXが復活してくれて、嬉しい限り。
普段は川崎使ってたけどひと駅分足を伸ばしても問題ない、というか伸ばさないと勿体無い、という気持ち。
私的には新宿IMAXがまっっったく合わないため(ゴーストが酷い、頭かぶりする、音響はいいと思う)都内ならここだな。
作品被ってたなら品川選びます。違う作品やってたら使い分ける。
ただ、関東で一番いいIMAX劇場は何処ですか?と聞かれたら、成田と即答します。通える場所じゃないけど。流石に片道約3時間もかかる場所にはそうそう行けない…
ちなみに好きなIMAX劇場は都内なら品川、としまえん、木場、神奈川なら川崎、湘南かな。
ブルク13のIMAXはまだ未体験なので、そちらも行ってみたいところです。

 

体内で渦を巻く言葉たちは、内臓を千切る(THE POET SPEAKS感想)

https://www.instagram.com/p/BGOFWDHkKfx/

 

行って来て暫く経ってしまったのだけれど、どうしてもこれは書き記さなければならないと感じているので残しておく。断片的なメモはあったけれど、きちんと時系列に残しておきたくて。
 
 
『THE POET SPEAKS――ギンズバーグへのオマージュ』に行って来た。
私にとってギンズバーグと言えば『キル・ユア・ダーリン』なのだけれど、まさか彼に関するイベントが行われるなんて思っていなかったので即チケットを取った。
ギンズバーグ以外のことは、何も知らなかった。村上春樹柴田元幸が翻訳したと聞いて、なるほどとは思った(ギンズバーグの翻訳をしていた諏訪優は既に亡くなられている)
フィリップ・グラスはかろうじて名前を知っていて、パティ・スミスに至っては彼女のことを何一つ知らなかった。つくづく自分は無知だと思う。けれど、ギンズバーグのお陰で私はこの数年で様々なことを知ることが出来たし、今回はまさに私の人生では繋がらなかった二人の音楽家と出会わせてくれたのだと思う。ありがとう。
ちなみに私は2年前に『キル・ユア・ダーリン』という映画を観て以来、狂ったようにビート・ジェネレーションや関連する文化への興味に傾倒している。傾倒、というか、人生がちょっと傾いている。
 

そういう訳で出演者のことを全然知らなかったため、当日までどんなイベントになるのかすら想像がついていなかった。音楽に関するイベントなので、コンサートと思えばいいのか?という感じ。
いつも行くようなコンサートとは、当然だけどまったく雰囲気が違った。(普段は日本のロックバンドかポップスのミュージシャンのコンサートとかに行く。最後に行ったライブは父親の連れとして柴咲コウのコンサートに行った)
すみだトリフォニーホールには、モノクロでおしゃれな服を着た男女が集まっていた。年齢層はある程度高めな気がしたけれど、若い人も沢山いた。
三階の端の方の席だったけれど、スクリーンに大きくアレンの写真が映しだされていたので、特に困ることはなかった。
ただ、オペラグラスは持ってきた方が良かった。失敗。


最初に女性と男性が出てきたけれど、フィリップ・グラスパティ・スミスでは、ない、なあ…と思っていたら演奏と歌が始まった。
彼女はパティ・スミスの娘ジェシーだった。男性はテンジン・チョーギャルという方。
オープニング・アクトという概念をすっかり忘れていた。3曲ほどやって、彼女たちは退場。
 
 
そうしてここでパティ・スミスフィリップ・グラスが登場。
パティがフィリップと手を繋いで出てきたのが印象的だった。
パティが冒頭に「ギンズバーグは90歳、フィリップは80歳、私は70歳を迎えた。私はまだベイビーよね」
みたいなことを言っていたのが面白かった。皆6月生まれなのも、不思議な縁みたいな気持ちになる。
しかし70歳でベイビーなのだ。私なんぞまだ生まれてもないのかもしれない。
そして彼女はオバマ大統領が広島に訪問したことについて触れてから、フィリップのピアノをバックに、詩を朗読し始めた。
それに合わせて、それまでアレンが映っていたスクリーンが、詩の翻訳した字幕が映しだされた。
始まった途端、パティ・スミスの力強さがそのまま詩の強さになってこちらに伝わってきた。
「未来へのノート」の冒頭、目覚めよ、が繰り返されるのが本当に体内の細胞が割れて新しくなっていく感覚。
しかし次に読まれた圧倒的に「ウィチタ渦巻スートラ」が良かった。「おれは戦争の集結をここに宣言する!」という一文では途中にもかかわらず拍手が起こった。この詩はノートに書きつけられたものではなく、声で語られてレコーダーに焼き付けられていた。なので、読まれることによってはじめて威力を発揮していると思う。
パティの詩と、アレンの詩が交互に読まれているようだった。アレンの方は新潮*1で予習していたけれど、プログラムを買っていなかったのでパティの詩とは知らずに聞いていた。
 
パティは歌も歌っていた。
途中で歌詞を忘れて演奏だけになった時、「I'm sorry、歌詞忘れちゃったー」と手を広げてたのかわいかった。
何事もなく演奏が続いていくのもその場を楽しむようで。終わったら、私のマインドが飛んでいってしまったのよ、と何度も繰り返していた。
詩を読んでいる最中は、譜面台の上に置いた紙を読んだ端から床に捨てていったので、本人のお茶目な感じとギャップを感じた。
 
途中でフィリップ・グラスの独奏もあった。その間は、字幕が映っていたスクリーンが再びアレンの写真へと変わる。殆どが見たことあるものばかりだったけれど、彼のひんやりとした演奏と一緒に見ると、また趣が違っているような気がした。ちょっとしんみりしてしまう。
フィリップ・グラスを楽しむなら次の日の公演なんだろうなーって感じ。
 
またパティが帰ってきて、再びポエトリー・リーディングが始まる。
「ひまわりスートラ」の直前に映し出された写真が、アレン、ジャック、ビル、そしてルシアンという見慣れたものでうわあと泣きそうになってしまった…ひまわりはブレイクの話であることは知っているけれど、彼のヴィジョンが映し出されているような気がして、勝手にうるうるしていた。ルシアンがいなかったことにされていなかったことにも。

極めつけには、最後に吠えるの脚注読んで私は死んだ…予習していたなら分かっていたことなんだけれど、この時まで私はすっかり忘れていた。私はこの部分が一番好きなのです。
繰り返されるHoly!はこの世への祝福のようだった。それにしても「聖なるかなルシアン!」が大スクリーンに映し出されてパティ・スミスに読まれるとかさあ…ルシアンは良しとは思わないだろうけれど、貴方は確実にアレンの魂の核の一部だし、ビートの最初の音を鳴らしたのはまぎれもなく貴方なんだよ。と、勝手に思う。身勝手に。泣いてしまったよね。
吠える脚注、Holy New York Holy San Francisco...とアレンに関連する地名を挙げていく部分があるんだけどラストをTOKYO!にしてくれてそこでも沸いた。これよくある演出だけど嬉しいよね。客席から歓声が上がったし私も上げてしまった。
 
 
ものすごく濃密で、満足度の高いポエトリー・リーディングでした。行って良かった。
ギンズバーグが好きでよかった。初めてのポエトリー・リーディングが、アレンの詩で良かった。
彼のポエトリー・リーディングこそ体験してみたかったけど、それは私には叶わなかったので。Youtubeとか探せば聞けるけど。
しかし最後の曲、ピアノ弾いたのがパティの娘だったためフィリップ・グラスはギターの人の隣に行ってサビ以外は手拍子だけというある意味で世界で一番贅沢なステージだった。
 
 
パティはアレンを師と仰いでいて、亡くなる時も傍にいたと聞いて本当に好きだったんだなあ…と帰り道プログラムを読みながら、改めてかみしめていた。
彼女の詩はギンズバーグを想起させるような言葉の羅列、息継ぎまでのセンテンスの長さ、力強いメッセージ、とまさしく弟子の言葉であった。

 そのプログラムと新潮がこちら。
ギンズバーグの詩集と共に。
プログラム、黒い紙に黒い箔押しでタイトルが書かれていて、格好いいことこの上なかった。

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ステージに上がる時、おりる時、パティもフィリップもどちらも皆手を繋いでいたのが印象的だった。アレンを通して出会った人たちが、彼の亡き後も繋がっている、ということを象徴するかのように。しかし70歳80歳、と言ったけれど信じられないほど猛々しい生命力を感じた。日にちが経ってしまったが、彼のピアノの音と彼女の発した言葉は、まだ身体の中で渦巻いている。


 
 

*1:新潮1337号「アレン・ギンズバーグ、五篇の詩 村上春樹柴田元幸

北欧のお兄さん、アレックスが日本にやってきた!ヤァ!ヤァ!ヤァ!(ターザンフッテージ上映イベント行って来ました)

 

GO! TARZAN!

https://www.instagram.com/p/BGUHgBXkKcp/

めちゃくちゃ必死に応募したら招待状が届きましたので、6月9日に行って来ましたターザンフッテージ上映イベント!
普段は楽しみにしている映画に関しては、公開前に予告すら観るのも好きじゃないのですが、ターザンは大丈夫だろうという気持ちで行って来ました。

当日は開場の前から行列が!
皆アレックスが好きな人なんだなあ…とニヤニヤしてしまう。
入場時には、招待状と引き換えに座席指定券を渡されました。
普段試写会とか行くと、招待状回収されてしまうので、これは嬉しいプレゼントでした。
思い出もモノもどっちもほしいから!
映画のチケット半券も手帳に貼って取っておくタイプです。

 https://www.instagram.com/p/BGeC2uaEKRC/


会場に入ると、舞台の左右に椰子の木やいかにも南国のような花が設置されており、ジャングルを髣髴とさせる舞台になっていました。
私たちは舞台から見て左側、自分たちから見ると右側の位置にいました。席は前から6列目。近い!
ちょうど4つ並びの席で、お友達と妹と一緒に座っていました。
ここにアレックスが…と思いながら、開演時間まで待ちます。
15時ぴったりに登場したのは司会の荘口彰久さん。
映画の紹介をそこそこにまずはフッテージの映像を観てください!ということに。

 フッテージ映像について(ネタバレなし)

突然本編の映像が流れ始めました。
思いっきり本編、しかも冒頭ではなく、明らかに中盤っぽい。
そんな映像を、肝心な部分に入る前に終了する、というのが三回繰り返されました。
割と好反応な会場。どわわ、と笑いが起きたシーンも。
最後にいつもの予告が流れて終了。
すべて合わせて、わずか10分ほどの時間でした。
でも結構、本編見た気がする…
今回の売りである英国貴族のシーンはなかったから、そちらは劇場公開までのお楽しみかな。

 

レックス、登場!

そこから会場にライトが点き、いよいよアレックス登場…かと思いきや。
「舞台をもっとジャングルっぽくしますのでしばしお待ち下さい」と。
そして運ばれてきたのが巨大な草木のセット。真ん中にはターザン:REBORNの文字が。
本当に壁一面ジャングルのようになっていたらと思ったら、遂にアレックスが!
一気に湧き上がる歓声の中、すらりとしたアレックスが現れました。
私達もワーキャー叫びアレックスの名前を呼びながら、作ってきたウェルカムボードを出して歓迎していました。(勿論体より上には掲げてません!)
本日は黒シャツにグレーのパンツ。当たり前だけどサングラスかけてない!
出てきた瞬間には、客席の左側に座っていたファンの方が掲げていた「投げキッスして!」というボードに反応して投げキッスしていました!
かと思ったら、こちら側を覗きこむように見たかと思うと、手を降ってくれました。
一気に盛り上がる我々。
そしたら実はその時、「昨日会ったよね?」とアレックスが声をかけてくれてたんです。
昨日空港へ行ってた私と妹のこと、覚えててくれた!すごい!
登場してすぐに「僕はどこに立てばいいの~?」と長い足でバミリ(立ち位置の印)をつい、つい、と指しているのが凄く可愛かったです。

そんなオープニングのっけから射抜かれていたのですが、ここから司会者が進めていきました。
レックスが日本に来たのは三回目!前回は映画『バトルシップ』のプレミアの時。その前はプライベートで来ていたようです。
さっきお寿司を食べてきたんだよ!というアレックス。
そこから何故か怒涛のお寿司トークがスタート。
彼曰く、観光客がよく行くような店ではない所がいい!とリクエストした所、このステージの半分くらいしかない店に行って来たよ!と。
板前さんが二十歳にしか見えなかった、とか寿司屋の話が暫し続きます。
「そろそろ映画の話を…」という司会者に、「僕はずっと寿司の話でいいよ」とまで言っていました。笑

 

ターザンについて

レックスを目の前にした司会者が、なんだかすっかりターザンにメロメロな様子。
散々熱く、特にアレックスの肉体について語った後、我に返っていた様子が面白かったです。
そのままどうやって肉体改造をしたのか?という質問をしていました。
レックスはボディビルダーのような「魅せる体」ではなく、アスリートのような「動ける身体」を作りたかった、と言っていました。
鳥のササミと、ブロッコリーと、食事で調整をしてから、普通のトレーニングも試したし、ヨガやピラティスもやったよ、とのことでした。
喋っている間、左手はずっとポケットにしまわれたまま。時折ジェスチャーをするために出して、またすぐひっこめていました。
また、翻訳の鈴木小百合さんが日本語で話している間も、彼女の方をじーっと見つめてきました。
頷くわけでもなく、ずっと見つめている。たまに客席の方に目をやると、手を振ったり、投げキッスを返したり、手の指をおいでおいで、するみたいな仕草をしたり。
一度、鈴木さんが日本語で話している間に、後ろの緑一面な壁をじーっと見つめてはさわ…さわ…と触っていて、観客がそれを見てかわいいかわいい言ってたら自然に気付いて、照れたように笑っていたのがすごく可愛かったです。
役作りについては、ドキュメンタリー観たり実際に動物園に行ったりしたと言っていました。しかし動物園に行って、ライオンやヒョウを見ていた…ってネコ科の動物ばっかり見ていたのなんで?笑
最後にはシルバーバックのゴリラを見たよ!と言っていました。良かったちゃんとゴリラも見てた…
また、子供の頃から憧れだったターザンを演じられて光栄だったとも。
父がターザン大好きだったのもあるしね、と言っててやっぱりステラーン!と思う一面もあったり。


その後はプレスの方から質問の時間になりました。
最初このイベントはファンとの交流イベント、と銘打っていて、内容にQ&Aと書かれていたので一般枠からも質問できるかなーと思っていたのですがそんなことはなかった。なんだったんだ。
最初の質問は「日本にはアレックスさんのような素敵な方がなかなかいませんが、日本の男性にアドバイスをください」というもの。
これに対してアレックスは、「日本の男性は十分セクシーで格好いいと思うよ?」と連発。「僕は黒澤の映画を観て育ったから、ミフネとか格好いいじゃない!素敵な男性が沢山いるよ!」
それは少々過去なので、現代には…と尚も続く質問に「じゃあミフネを見習うといいんじゃないかな」とのお答えでした。

次の質問は、ターザンはアレックスにとってどんな存在か、というもの。先ほど役作りなどで似たようなことを聞いたため、翻訳者さんが少し質問を変えていたような感じでした。鈴木さん流石です。
レックスは、ターザンは人間の文明的な部分と野性的な部分の二面性を持ち合わせた人である、という話をしていました。妻ジェーンを助けるためには英国貴族のままでは難しい、だからターザンの面が出てくると。彼は「本当の自分を見つける物語でもある」と話していました。
ここでもう一問、と続ける方に時間がないので、と次の人へ指そうとしたら、アレックスが突然「誤解のないように言っておきたいんだけど」と言って付け加えて話し始めました。

「妻のジェーンはただ守られるだけの存在ではない。彼女はターザンにとってとても重要な役割を持っているんだ。彼女はターザンですら分かっていないターザンのことを深く理解している。彼女は一番の理解者なんだ。彼女の存在が、ターザンを救うんだ」と。
共演しているジェーン役のマーゴット・ロビーは、監督にジェーンを演じるにあたって、ただ守られるだけの存在には絶対にしたくないと言っていたそうです。マーゴットも格好いいし、彼女のことを汲んでわざわざ付け加えたアレックスも素敵!

そして結局ここで、質問タイムは終了。全体的に、一つの質問にものすごくアレックスは語っています。
この時点で終了予定時刻(15:40)を過ぎていました。

 

ゲスト登場

ここで、ゲストの方をお呼びしたいと思います…と言って現れたのはお笑い芸人の横澤夏子さん。
花かんむりに白いワンピースで、ジェーンをイメージした格好でした。
出てくるなりアレックスがハグでお出迎え!そのまま頬にキス!
会場には悲鳴が上がりました。
しかし一番うろたえていたのは横澤さんで、多分今まで受けたことのないであろう歓迎に「イヤーーーー!!!!!キャーーー!!!!」と悲鳴を上げていられました。

「今私汗すごいことになってるんですけど!」

と叫ぶ姿に、完全に自分たちを見ているような気持ちに。

横澤夏子です! I'm Jane!」

と言えばすかさずアレックスが「Yes, my Jane!」と!日本のジェーンだね、とニコニコなアレックス。
横澤さんが話している間も、アレックス、物凄く見る。じっと見凝める、と言いたくなるくらい横澤さんの花冠辺りを見ていました。
そして頭にもキス!なんであんなに大盤振る舞いしてるの?と思うくらいにキスの嵐でした。気に入ったのかな。「次回作には君が出てよ!マーゴットにはクビって言っておくから」と凄まじいジョークが出てくるくらい。次は君が出るんだよ!とかはよく言うけど、現出演者クビにするから!とまで言う人見たことないぞ。
終わりの方になってくると横澤さんが「ジャパニーズ・ミニチュア…ジャングル?」と言いながら盆栽のプレゼント。
レックスは「これ持って帰れるかな?」としげしげ眺めながら喜んでいるようでした。持って帰る気なの、嬉しい!
そしてフォトセッション。アレックスと横澤さんで撮った後「では横澤さんご退場頂き…」と言われてすみませんと横にどいていく横澤さん。そしたら何故かアレックスも同じ方向に歩き出し、そのままはけていきそうに。
荘田さんが慌てて止めたら「今とても汗をかいているから、拭いてくるよ」と言って一度アレックスはステージから消えてしまいました。
その間にも、「やっぱり日本の男性は…」とダメ出しをし続ける横澤さん。司会の方がいらっとするというお決まりの一幕。
「だって汗を拭いている姿だって格好いいんですよ…あのタオルが欲しいですよね!」
ステージの上からだと裾で汗拭いているアレックスが見えているらしく、実況してくれていました。
しかし完全にファンガール化されている。
最終的には「あのタオル、客席の一名様にプレゼント出来ませんかね?」と提案して却下されていました。

ようやくアレックス再登場。もう一回一人でフォトセッション。
後ろにカメラがあります、と言われると「Hello, Movie camera!」とぶんぶん手を振りながら叫んでいました。
投げキッスも!本当大盤振る舞いだなあ!
全てが終了して、アレックスが舞台から去る時も、最後にこちらの方を見て「サイン(ボードのこと?)ありがとう!」と叫んでくれました。優しすぎる!
当初想像していたイベントとはちょっと違いましたが、ものすごく楽しかったです。

 

これがそのウェルカムボードです。

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本当はもう一種類あったんですが、そちらが今手元になかったのでこれだけ…
うちわに厚紙足してるだけなのでそんなに大きくないです。

本当の交流イベントはここからだった

イベントが終わってから、帰るアレックスがひと目見られればいいよね、と何十人かで集まっていました。
するとSPの方が現れ、「急に走って動いたりしなければ、アレックスさんはここから出します」と言ってくれました!
じっと動かず待っていること約1時間、アレックスがなんと歩いて登場!
車で去っていくのに手を振れたらいいよね、くらいに思っていた私たちはびっくり仰天!
ファンサービスしてくれる気満々で現れた彼は、にこにこと快く一人ひとりにサービスをしてくれました!
しかも、「アレーックス!」という叫びや、「写真撮って!」という呼びかけに「Sure!」や「Thank you!」と一々返事をしてくれる。何度も言うけど優しすぎか。
子供が「ターザン!」と呼びかけたら「ハァアローゥ♡」と返事をしていたのがめちゃくちゃ可愛かったです!
ファンの方も、サインして写真を撮ってもらったら後ろにはける、という流れができていたので、大変スムースにサービスを受けていました。
そしてアレックス、出てきた通路にいたファンだけではなく、道路を挟んだ向かい側のファンにもサインをしにいっていました。なんとスタッフさんの制止も聞かず、「やる!」とずんずん進んでいった姿が格好良かったです。
最後に、借りていたペンをファンに向かって投げて、「バーイ!」
車に乗り込むと窓を開けて投げキッス!
そしてアレックスは、真昼の新宿へ消えていったのでした……
終わってから、最初から待っていたファンの方で、サインがもらえなかったと言っていた人が誰もいない!
「格好良かったね…」「凄かったね…」「優しいね…」とそこらかしこからアレックスへのつぶやきが漏れていました。
中には泣いていた方も。分かる、分かるよその気持ち…

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めちゃくちゃ優しい。
日本人、そんなに背の高い子がいないので、ずっと顔の近くに寄せる→立ち上がるを繰り返していてスクワット状態でした…
そして背中がびしょびしょだった…

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会場内でも暑かったけど、外の熱気も凄かったです。
そんな中、ずーっとファンサービスをしてくれたアレックスには、感謝しかない!


私は空港の時に用意できなかった手紙を渡しました。
「Oh, thank you!」と言ってもらえた!
そしてサインのリベンジを果たし、ツーショットも撮ってもらいました。ありがとう本当にありがとう。

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ジャパン・プレミアやるらしいので、また来てくれないかな、と夢見ています。
今度は家族でおいでよ。

 

映画『ターザン:REBORN』は7/30(土)日本公開です!

wwws.warnerbros.co.jp

夢にまで現れる名前を追って(タルコフスキーオールナイト)

世界の映画作家シリーズVol. 173

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オールナイトで映画を観ることは何度かしたことがあるけれど、一人で行くのは今日が初めてだった。

池袋にある新文芸坐には、もっぱらオールナイトで行くことが多い。
見逃した作品をハリウッド大作から都内1館しかかかっていなかったような作品まで幅広く均等に扱ってくれる名画座だ。また、特集上映が豊富なのも魅力の一つだと思う。
ただ、私の家からは遠いので、「これぞ!」という作品でないと、中々足を伸ばせない映画館だった。
そして、昨晩がまさに「これぞ!」という演目だった。

アンドレイ・タルコフスキー
今年になるまで彼の名前すら知らなかった。かろうじて『惑星ソラリス』だけ名前だけ聴いたことがあった。
普段観ている映画のジャンルからは程遠い。
それでも彼の作品を観ようと思ったのは、何故か今年に入ってから彼の名前を何度も何度も繰り返し、色々な場所で見かけたからだった。
Twitterで、人の話で、坂本龍一プロデュースの爆音映画祭のラインナップで、インターネットの記事で。
何度も目の前に現れる名前は、何か特別な縁を感じてしまう。
運命と言うには大げさ過ぎるけれど、その時に出会うべくして出会っているのだ、だから手を伸ばすべきだ、と思う。その予感はあんまり外れたことがない。

そして決定的だったのは、映画『レヴェナント』の感想で、何度も彼の名前を目にしたことだった。
レオナルド・ディカプリオ、悲願のアカデミー賞主演男優賞受賞作。他にもたくさんたくさんの賞を獲ったという前評判だけが闊歩したまま、ずっとお預けを食らわされていた。
そんな前評判が光り輝いていた『レヴェナント』は、今年公開した数ある作品を全てすり抜けて、ガツンとこちらを全力で殴りにきた映画だった。
熊に大怪我を負わされても土に埋められても濁流に飲み込まれても、ディカプリオ演じるグラスの中を巡る憎悪が、真っ黒い炎となって真っ白な雪景色の中に立ち昇るような錯覚を覚えた。復讐に生かされている男の迫力に、私は完全に心奪われていた。
そんな『レヴェナント』はタルコフスキー作品へのオマージュである、類似性がある、という感想を見かけて、彼の作品を観てみようと思った所に現れたのが、新文芸坐のオールナイトだったのだ。

 

前置きが長い。

 

この映画を観よう!と思うと、最近はもうあらすじさえ確認せずに何も知らない状態で観ることが多い。
調べるのが面倒くさい、というのも本音だが、もうこれから観るのだから別にあらすじとか知らなくてもいいでしょう、という気持ちになってしまう。
そんなわけで、今回全く何も知らない状態で『ノスタルジア』『ストーカー』『惑星ソラリス』観て来ました。

 

映画感想

ノスタルジア

これが一番好き!火と水を多用する、という話をちらりと聞いていたけれどまさにその通りで驚く。
全編を通して撮影が美しい。光と影のバランスは息を呑む。いつも浮かび上がる生命の色は緑色。
聖母の中から鳥が飛び立つシーンは、レヴェナントにもあったなあ、とぼんやり。
イタリア語で歌われる聖歌が、それまで「音」の連なりとしか認識できなかったのに、字幕が振られた瞬間に「歌」に変貌するのが面白かった。
その後すぐに芸術の翻訳は不可能である、では音楽は?という話が出てきたので、頭の中を覗かれたような気持ち。
歓喜の歌が絶叫に切り替わる壮絶さは凄かった…
ろうそくの火を持って水を渡る、というシーンが大好き!
火は意志だ。水は生命だ。どちらも併せ持つのは人間だけだ。

 

『ストーカー』
禁止された“ゾーン”に魅入られた男たちが何かを渇望して足を進めていく。
“ゾーン”に入っていくまでのわくわく感!あの線路の上を進む小さなハイカー(?)での移動のシーンがすごく美しくて好き。
ゾーンの中が緑に覆われていて、来た者が帰ってこない場所なのに、不思議と生命は息づいているような、しかし花の香りはない無機質さを感じた。
しかし2部の途中で気づいたら意識がなくなっていて、途中でまったく分からなくなってしまったのが哀しい…
面白かったのに!近々リベンジする。絶対だ。

 

惑星ソラリス
宇宙の映像が殆ど無かったのでびっくり。
映される惑星の景色は、立ち込める霧と思考する海ばかり。
それが正体が見えない不安を煽る。
姿の見えない恐怖がずっと立ち込めていて、ものすごくはらはらしながら観ていた。
途中で出てくる立体高速道路、「銀座方面」の文字に日本だということに気づく。

 

全部観終わった感想は、とにかく全てが良かった、ということ。
観に行くかどうするか結構最後まで悩んでいたけれど、スクリーンで観ることが出来て本当に良かった。
『ストーカー』のリベンジは勿論、『鏡』や他の作品も観たい。
思っていたより楽しめたことに驚いた。昔なら意味が分からない、だからつまらない、と結論づけていそうだったから。

 

使われているモチーフとか印象的なこととかメモにしたかったんだけど、万年筆しか取り出せず、全部自分の手の甲に書いた。すごく危ない感じになった。
何度も洗っても完全には落ちなくて、一日経って、ようやく消えた。