熱に羽化されて

好きすぎてこじらせたうわ言や思考の整理など

ロズギルの上演と上映をどちらも楽しんだ話( #NTLiveアドベント )

この記事は「ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)10周年企画アドベント」の16日目です。

adventar.org

 

はとと申します。普段は映画を観ていることが多く、舞台もちょいちょい観ています。最近は男女混合ヒップホップアイドルユニットの話もしています。
NTLは初年度2014年から観続けています。今年は久々に全演目観れました。やったー!

何書こっかなと思ってたらあっという間に当日になってしまった。
この10年、1本もNTLを観ていないという年はなかった。なんとかくらいついていったり、見逃したりしていた。
思い出はいっぱいあるので振り返りつつ、ずっと胸に秘めていた野望と、それが叶った話をしたい。


このことを最初に考えたのは、本当に最初の頃だった。
思い返せば2014年1月、NTLが日本に上陸するというとても嬉しいニュースが流れてきた。
シリーズの一発目は『フランケンシュタイン』だった。ベネディクト・カンバーバッチジョニー・リー・ミラーのダブル主演。
当時、私の周りではベネディクト・カンバーバッチのファンがたくさんいて、既に上演が終了していたベネさんの舞台作品が、まさか日本で見れるなんて!と喜んでいるのを見ていたのを覚えている。もちろん私もその一人だった。
それと同時に脳裏によぎっていたのは、この催し、いつまで続くんだろう?ということだった。

 

これひょっとして、続けていれば私の最推し、つまりダニエル・ラドクリフが舞台に出演した時にも映像化してくれるんじゃないか?

 

初年度のシリーズは、ベネさんの次にはトム・ヒドルストン主演のシェイクスピア劇『コリオレイナス』だった。話題になりそうな人選で、うまいと思った記憶がある。
その後も有名俳優や素晴らしい演出家、有名な古典劇などが連なっていた。
知らない作品も多々あったが、わざわざイギリスから日本に持ってくるのだから、面白いものが見れるだろうと思って、とりあえず全部通ってみようと思った。
シェイクスピアなんてほとんど見たことが無かったのだけど、NTLのお陰でだいぶ触れることができた。本当にありがとう。
好きな俳優が出ている作品はもちろん観ていたのだが、それ以上の楽しみ方もできるようになってきた。
観ている内に、海外舞台が好きな人たちをTwitterでフォローするようになり、この人たちが話題にしている作品が日本で見れる!というのも楽しみの一つになっていた。

 

そして時は流れて2017年。1人で渡英して、時間の許す限り演劇を観る旅をした。その時に一番の目的だったのが、ダニエル・ラドクリフとジョシュ・マグワイアが主演の『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(以下ロズギル)だった。
この話は人の本に寄稿したり以前別のブログでも書いたので省略しようかと思ったけど、何度話したっていいよね。


ロズギルはシェイクスピアの『ハムレット』に登場する端役の登場人物、ローゼンクランツとギルデンスターンの2人が主人公だったら?という二次創作みたいな話で、トム・ストッパード*1という作家の書いた戯曲である。
わざわざ海外に行って舞台を見るくせに、英語があまり得意ではない。なのでもちろん予習をした。
ハムレット自体の内容は、NTLはもちろん、日本でも何パターンか観るなど予習済み。
その上で、当時は絶版になっているロズギルの戯曲本を図書館を借りて読んだ。
しかし、これがいかんせん難しい。面白い場面もあるのだが、2人が延々と答えの出ない問いに問答をしていたり、謎めいている部分が多い。

これ大丈夫か……?と思いながら、ロンドンでは2回観た。
2階席の一番前という、全景を全て見渡せる素晴らしい眺めの席と、一般会員が取れる一番前、前から3列目という2パターンで見たけど、どっちもすごく楽しい観劇体験だった。
ただし、やっぱり難しかった。この場面でどういうことをしているというのはなんとなく理解はしているが、台詞としてこうしゃべっている、という置き換えの対訳など全く持って不可能。雰囲気で見ていた。
その上初めて生で見るダニエル・ラドクリフだ。正直興奮でどうにかしているようなものだった。
ものすごく楽しかったし最高の思い出だが、理解度としては十分では無かった。

 

そう思って帰ってきた年の暮れ、2018年のNTLの演目のラインナップが発表された。

 

2/2〜『エンジェルス・イン・アメリカ第1部』
3/16〜『エンジェルス・イン・アメリカ第2部』
5/25〜『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』
7/6〜『アマデウス
9/28〜『イェルマ』
10/19〜『フォーリーズ』
11/23〜『ヤング・マルクス
11/30〜『ジュリアス・シーザー

 

叫んだ。

 

「ロズギル入ってる!!!!!!」

 

しかも、渡英した時にはギリギリ期間が被らなくて涙を飲んだ『エンジェルス・イン・アメリカ』もやる!!!
この年、観たいものだらけで本当にガッツポーズだった。実際、2018年のNTLは全演目皆勤賞だった。
また見れる。嬉しい。こんなに嬉しいこと、現地で見たものをまた日本でも観れるんだなと思った人はいないかもしれない。いや、もしかしたら思っているよりいっぱいいるのかもしれない。
とにかく嬉しくて嬉しくて、友達を誘って行こう!と叫び続けた結果、オフ会まで企画した。
しかも、TOHOシネマズ日本橋では、月曜から1日に2回も上映してくれたのだ。2回かかることってあまりなくなっていたので、久々にいいニュースにも喜んだ。

無事に上映が始まった時、まず何よりOld Vic劇場が映った瞬間、胸がいっぱいになって泣いてしまった。私ここ行ったんだ、と思い出に触れられるようだった。
映像はもちろん素晴らしく、舞台で観るのとはまた全然違った角度で見られるのが良かった。アップになる表情もしっかり見れる。NTLのカメラワークが好きなので、こう見せてくれるんだと思っていた。

 

何より、日本語字幕付きで観られる幸せよ!
実は初期の頃のNTLで字幕を作っていたのが本国の人で、ミスや誤字脱字が多くてかなり厳しいものがあったが、2018年はだいぶ安定していた。
土曜日に日本橋に集まって、皆でロズギルを観て、しかもその後すぐにおしゃべりできたのがとても楽しかった。
実は、ロンドンでも初回は友達と観ていたのだが、その時の友達がもう一度来てくれたのが嬉しかった。
続けて見ていると、こんな思いも出来るのだな。見続けていて良かったな、初年度で終わりにならなくて本当に良かった。私の野望が叶った瞬間まで、約4年。長いようで、10年やっていれば短い内に叶ったもんだと思う。
ちなみに、本国で観た後、NTLで上映される間に、日本でもロズギルの公演があった。こっちもなんとか観られたので、見比べることが出来た。

左からロンドン版、NTLジャパン版、日本公演版のロズギルのパンフレット

3パターンもロズギルのパンフを持っている。本国版よりNTLの方が分かりやすい

 

それ以降も、同じくロンドンで観た『シラノ・ド・ベルジュラック』で同じ思いをしている。
やっぱり予習は出来たものの激ムズ&早口ラップだったので、こちらも同じく大変楽しんだ。
NTLにも色々な楽しみ方があるが、その内の一つは……

イギリスに行って見てきた舞台の復習ができる。最高。

これからも末長く続いてほしい。

 

そして続いていれば、舞台で活躍する推しがあなたにもいたら、いつか日本でも映像化されて観れるかもね。
だから私はこれからも見続ける。
いつかあなたの番が来るかもしれないから。

 

次回の担当は、このNTLiveアドベントの主催であるLilyさんです。

今回開催してくれて本当にありがとう。周囲でアドベントブログ企画をやっている人がなかなかいなかったので嬉しい限りです。

橋からの眺めも、善き人も観たので、分かる、分かるぞ〜…!楽しみ!

*1:NTLでは『レオポルトシュタット』も彼の手がけた作品だが、作風が全く異なる。