熱に羽化されて

好きすぎてこじらせたうわ言や思考の整理など

クリスマスに観なくて良かった(映画『ハピエスト・ホリデー』感想)

オンライン試写で見たのだが、公開日になったので感想をアップする。

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日本語バージョンの副題が苦手なので原題の方のポスターを掲載。

クリスマスが苦手なアビーは、一緒に住んでいる恋人のハーパーに頼まれて、彼女の実家へ一緒に休暇を過ごすべく里帰りをする。しかし、ハーパーは家族に恋人の存在どころか自身がレズビアンであることさえ伝えていなかったことを、帰省直前に告白する。しかも父親が市長選の活動のため、クリスマス休暇が終わるまでは恋人であることを黙っていてほしいという。嘘が苦手なアビーは、不安に思いながらもハーパーのためなら、とただのルームメイトとして実家に行くのだが…

 

この作品は、劇場公開は無しで、現在は各種有料での配信オンリーである。

ハピエスト・ホリデー 私たちのカミングアウト (字幕版)
 

 

ハピエスト・ホリデー 私たちのカミングアウト (吹替版)
 

 Amazon、字幕版と吹替版でレンタルバージョンが違うの、昔のレンタルビデオショップみたい。他の媒体がどうなっているかは知らないので悪しからず。 


Amazonの他にApple TV、Google Playストア、プレイステーションビデオ、TSUTAYA TV、ビデオマーケット、ひかりTV、などで配信中だそう。
公式サイトに一覧があるのでそちらからもどうぞ。

www.sonypictures.jp

掲載していないところだと、Huluストアなどで各種有料で観れるそう。
Hulu、いつからそんなアマプラのレンタル機能みたいなの開始してたんだ。

 

以下の感想は、鑑賞済みの方向けです。

 

 

 

 

 

 

 

はっきり言いますが、ズッタズタになった。こんなにしんどいと思わなかった。
主人公の恋人であるハーパーが、家族にカミングアウトするかどうか?という話に終始している。絵に描いたようなWASPっぽい家庭で、三姉妹のうち両親のお気に入りとして期待されているハーパーが、なかなかカミングアウト出来ないという状況は理解出来る。特に父親が市長選を控えており、姉妹の中では率先してキャンペーンに駆り出されているため、家族の手前理想を演じなければいけない葛藤も理解出来る。
しかし、このハーパーは、クリスマスが好きではない恋人に対して、クリスマスには自分と一緒に過ごすために実家に来てほしい、ただし恋人とは言わないでほしい、というお願いをする。しかも相当な距離を移動した後、実家に着く直前になって言うのだ。はっきり言って、恋人が断れない状況を作り出してから言うのは卑怯だ。
しかも、実際に帰省してから恋人に失礼な振る舞いをする家族や身の回りの人に対して注意したり嗜めたりはしない。笑顔を作ってやり過ごすだけだ。それは彼女の自衛手段なのも分かるが、わざわざ自分のテリトリーに連れ込んでおきながら、パートナーを守る行動を全くと言っていいほどしない。これが終盤ほどまでずっと続くので、最後の最後に彼女も怖かったんだ、仕方なかったんだ、と言われても、全くピンとこなかった。家族に嫌われたくないのは理解できるが、パートナーがあれだけ傷ついて、しかも最後は自分がトドメを刺すようなことまで言っておいて、別れたくない、愛してる、でそれで全てよしにしてしまうにはあまりにも辛い時間が長過ぎた。90分映画がこんなに長く感じたのは久々だった。

 

更に言うなら、ハーパーがアビーのことを好きな要素が全く見えなかった。「ここでの振る舞いは彼女じゃないみたい」とアビーが言っているので、普段はもっと違っているのだろうけれど、それでも全くと言っていいほど気にかけていない。その上、地元に帰ってきて久々に友人達に会ってはしゃぎまくるのに、恋人が自分の元カノと喋っていただけでヤキモチは妬くので、結構どうしようもない人でもある…彼女の魅力が全然伝わってこない…
実家にカミングアウト出来ないとか、そもそもカミングアウトしなければならないということは大きな問題となりうる話だが(本来ならどんなセクシャリティであろうと祝福されるべきというか、受けいられるというフェーズを通り越してそれが当たり前の世の中になるべきだと思いますよ)、この話はそれ以前の問題ではないか?
夫が妻を連れ帰って、誰も知り合いがいない妻をほうたらかして地元の仲間とつるんでる様子を延々と見させられてる感じ…これヘテロでも辛いやつだよセクシャリティ関係ないよ!
元々アビーはハーパーと結婚したくて、実家に連れて帰ってもらえるくらいなのだからと期待していたところがあるので、カミングアウト出来ていなくてもついてきた。嘘をつくのは苦手だけど、彼女と一緒にいれて、喜んでくれるなら…とついてきたのは愛だと思う。見知らぬ人だらけのところで一人取り残されて、嫌な気分になっても我慢していたのに。特に中盤、万引きの疑惑をかけられたところも辛かった。そこから更に重ねて、ハーパーの母親からブローチがなくなったんだが、あれもお前の仕業か?と暗に言われているシーンまであった。完全に泥棒扱いをしているのに、そこに関しては最後までフォローはなく終わった。

 

終盤、問題が一気に全部解決していくのだが、本当にそれでいいのか?が拭きれず、ハッピーエンドとされても全く気持ちがついていけなかった。喧嘩の末に大勢の前でアウティングした姉ともすんなり仲直りしてたし…積年の恨み方、あんなにサラッとは流れなくないか?とか、とにかく大味というか、キャラ造形がものすごく薄く感じてしまった。
それを最後はアビーも受け入れて仲直り、家族もそれに倣うので、カミングアウトが出来ない問題ではないと強く思ってしまった…
正直、同性愛者に限らず、自分のテリトリーにパートナーを引っ張り込んでおいて、ほうたらかしにするタイプの人が結構苦手なので、余計にダメージを食らったのかもしれない。しかし元カノに一度やった酷いことを今の彼女にはやらない、ではなくやった後に人がいなくなってから謝った、ではちょっとチャラには出来なくないか?無理では?私ならやめますよこんな人と付き合うのは…これ私がめちゃくちゃ傷ついてるな…

 

恋人と幸せになりたいが、カミングアウトするのは怖いという葛藤を描いた作品が生まれること自体はいいと思う。こういった異性愛では障害にすらならないようなことも、未だ大きな問題になってしまっている状況では、もっと同性愛者の悩みを描いていくべきだ。特にレズビアンの映画はゲイ男性に比べると少ないので、増えてほしい。しかし現代を舞台にした作品でこれなのは…もっと増えろ!

 

しかし、ハッピーエンドになるまでの障害が盛り沢山なのはラブコメにありがちなのだが、それ以前にその恋人はひどくないか?と思ってしまい、ハッピーエンドと言われても全然喜べなかった。
幸せなカップルが、ドタバタしつつもハッピーエンドなのかもしれないが、しんどいターンばかりがリアルかつあんまり救済がないので、思ってたのと違う…となってしまったのが大きいのかもしれないが、それにしたってなくない?
ゲイものもそうなんだけど、もうただハッピーなやつが観たいよ。こんなにしんどい思いしないといけないの、なんでだろう。
主人公の友人が割といい役の立ち位置で出てくるんですが、ペットの世話を頼まれたけど出来ずに魚は死んでしまうので、全体的に雑な脚本な気がする。生き物大事にしない雑さを節々に感じた。
彼がゲイセクシャルなのは、いわゆるマジカルゲイというよりも、主人公の気持ちが分かる側として出しているからそこはそこまで引っ掛からなかった。むしろマジカルゲイっぽくなってしまっているのはオーブリー・プラザ演じるハーパーの元カノ、ライリーだった。アウティングされて見捨てられた過去があっても許している。こうやってオープンマイノリティは許す描写が求められているようにも感じる…そこもちょっと辛い。またいい役だからこそ余計に感じる。

 

こういうこと書いてると女の話にだけ完璧を求めるのはどうかと思いますって言われることあるんだけど、こちとら「今度こそ幸せな女同士の話が観たい!!!」って切実な気持ちで観てるんすよ……踏みにじんないでよって思うよ…去年末に観た『燃える女の肖像』は傑作ですが完全無欠のハッピーエンド!かと言われれば…ですし…
アンモナイトも辛そうな気がしているので、今年は身構えっぱなしです。

 

日本でも配信前にタイトルが「Happiest Season」から「ハピエスト・ホリデー」と変えられた時、一緒にくっつけられた副題の「私たちのカミングアウト」(傍点つき)に批判が上がった。私もこの副題には否定的です。不要。
いやーでもHappiestってついてるのもどうかと思ってしまったぜ…一体何が最もハッピーだってんだ。序盤でネタにしていた結婚に回収するな。
クリスマス映画なのに日本での配信は3月ってどういうこと?と思ってたのだが、クリスマス時期に観たら本気で立ち直れなかったのでこの時期でまだ良かった気がする。観た直後もしばらく引きずっていたが…

 

と言うか私マッケンジー・デイヴィスもクリステンスチュワートも大好きなんですよ!!!
なんでこんな酷いキャラ演じてるマッケンジー観なきゃいけないのかねえ!?
クリステンが初っ端から家族に「何言ってんだ…」みたいな顔しているのは良かったけど…
オーブリー・プラザは良かった。
信じられるのはオーブリー・プラザだけ。

 

あまりにも辛かったので、以前まとめとして作ったこちらを最後に紹介しておく。
完全にネタバレだが、たまにはこういうものも必要だ。

privatter.net

このページ、観た作品の感想つけてはてなブログに再掲載したい。

 

【3/5追記】

マッケンジー・デイヴィスがレズビアンを演じた作品として、ドラマ『ブラックミラー』のシーズン3エピソード4「サン・ジュニペロ」を紹介するべきだった。こちらは傑作なのでこちらをオススメしたい。

ブラックミラーは基本的に一話完結で全く話に繋がりがないので、これだけ観て大丈夫。ただし、このエピソードを観て感激して他の話を観ると大体辛かったりするのでそちらは注意。

 

www.netflix.com

ブラック・ミラーはNETFLIXオリジナル作品である。