熱に羽化されて

好きすぎてこじらせたうわ言や思考の整理など

野蛮でスイートな味 #afocの話をしよう (第五夜『ひとさらい』)

5日目である。今日もどの曲がいいんだ、どれもいい……を繰り返していたのと、仕事が終わらないのとで書き始めるまでで一日の23時間を使ってしまった。まだDuolingoもやっていないというのに。というわけで、今日は短めに紹介する。フラッドの曲はこんなに短めの曲が流行る前から、それこそ13年前くらいから一曲が短めだった。なので、ライブでは2時間でも曲数がかなり多くなる。かなりお得な感じを味わえるので、ぜひぜひ足を運んで欲しい。週末大阪だよと昨日も言ってたが、金・土の二日間だったので明日からだった。明日はワンマンなので、どんなもんやねんと思う人は観に行くのにぴったりだと思う。轟音なので耳栓を忘れずに。

本日も最新アルバム『WILD BUNNY BLUES/野うさぎのブルース』から紹介する。これまで恐ろしいほどのペースで曲を作り、何作も積み上げてきてるのに、まだ新しい面を見せてくれるんだという意味でも素晴らしいアルバムである。正直全曲最高なのだが、特にお気に入りなのをピックアップしたい。
私の前置きは長くなってしまいがちだが、今日紹介するのはフラッド史上おそらく最短曲だ。1分ない。文字通り秒で終わるぞ!

ひとさらい


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物騒なタイトルだが、中身はびっくり、めちゃくちゃスイートである。割と明るめでロックな曲調で、野蛮で、そしてスイートとしか言いようがない。正直先にタイトルが明かされた時、どんな曲にするんだよ……と思っていたのでぶったまげた。
冒頭の歌詞がこちら。

真直ぐ歩けないひとは
羽落とした天使だから
ギターで殴って差し上げたい
そのジョーシってひと

私が野蛮でスイートと言う理由、伝わった?
ギターで殴るみたいな超絶暴力的なこと言ってるのに、天使とか言ってくれるんだ……というのがフラッドの持ち味だなと思ってるのだが、49秒でその世界観が伝わってくるの、すごくないか?元々TikTokで流せるように40秒の曲を作ろうとしていたらしいのだが、気づいたらちょっとはみ出たらしい。ちなみに、フラッドの曲は殆どがボーカルの佐々木亮介が作詞・作曲を担当している。他メンバーが書いている時もある。初期ではいなくなったメンバーと共同で書いているものもある。

 

最初の2行、この世を生き辛そうなマイノリティ全般を指していると思っているのだが、こんな優しい眼差しある?と思う。フラッドの曲、自問自答している時は結構辛い現実を突きつけてくるし、暗い曲もかなり多いのだけれど、この世の中の規範からずれている人や、マイノリティと思わしき人たちにはとても優しく聞こえる歌詞を書くなと思う。おそらく歌詞を書いているボーカルの佐々木自身が、自分をはみ出し者だと思ってる節があると思うのだが、はみ出し者同士、仲良くやっていけそうだなと思わせてくれるのが最高。
それこそ、辛い時にギター抱えておそらく自分を苦しめてるであろうジョーシを殴って差し上げたい、と言ってくれる佐々木の方が野蛮な天使だよ、と思ってしまう。
しかし、当の佐々木はバンドで色々あった末に、所属事務所を自分で立ち上げた社長でもあるので、経営者が「そのジョーシってひと」と歌っているのはなかなかシュールである。もしかしたらブラックジョークなのかもしれない。

ここまででまだ開始9秒である。流石に次へ進む。
その後の歌詞もすごい。

破ってみろ面(つら)の運命
破った水は夏の味
バカみたいな合言葉
大好きだよ マイハニー
最高 お前は最高
生きてるだけで 最高

発破かけてくれてるな…と思ったら、「大好きだよ マイハニー」と続き、最高と連呼される。なんだこれ、最高!
めちゃくちゃ肯定感爆上げソングなんだよ!
「生きてるだけで最高」と歌ってくれるひと、そんなにいないからありがたいね。ボーカルの佐々木、自分は自己肯定感が低いのに*1他人への肯定感は高い気がする。自分にもその言葉をたまにはかけてあげてくれ。私をはじめファンは皆佐々木のこと最高って思ってるからな!
ゴリゴリのロックバンドは、あまり多くはないけれど、ラブソングもちょいちょい歌う。でも、あまり性別を感じさせる歌詞が少なめで、そこがいいなと思っている。ハニーやダーリンという呼びかけ、別に性別を問わないし。
そしてこの後もまたすごい。ちなみにここまでで半分以上経っている。もう曲の後半だ!そして区切っているが、殆どひと繋ぎの歌である。

マイハニー こんなに可愛いお前を
許せない世界なんか
生きてるだけで
最低
さらってやる さらってやる

歌詞の中に「可愛いお前」と入っているが、これも性別を限定しない。何故なら佐々木亮介は対バン相手の男性バンドマンにも、当たり前に可愛いと形容することが多い。彼の可愛いの対象は性別で区切られず、単に「可愛い」と感じるものだ。こんなこと今や当たり前だとは思うが、以前はあまり当たり前じゃなかったと思うので。
お前は最高、だからお前を許せない世界は最低、と極端な対比になるのが物凄くて……そこで繋がってくるのがタイトルにもなる「さらってやる」なのがまた凄い。
ここで共闘してくれる人の方が正直好きなのだが、そんな気力もないほどにどうしようもなく打ちのめされた夜だったら、少しの間だけ音楽に逃げ込める。なんならさらうという暴力的な行為なんだけど、優しさのために使われていると感じてしまう。このバランス感覚が好きで、フラッドを聴いているんだなと思う。

後はとにかく佐々木リアコの人、いたらぶっ倒れるんじゃないかと思った糖度高めの歌である。
聞き終わったら、さ、さらってくれ〜〜〜〜〜〜!!!となったので私もすっかりやられている。曲(フィクション)だからこそ愛せる物騒さ。

 

ちなみに次点で短いフラッドの曲は「伝説の夜を君と」かな……?アルバムの表題曲で、こちらもめちゃくちゃ短くて、1分40秒しかない。
サビで「俺たち無敵さ」と繰り返し、観客とバンドをひとまとめに無敵と称してくれるのが嬉しくなる。
このツアーの時、ライブの1曲目にこれ歌ってくれると本当に無敵な気持ちになった。ちなみにアンコールの一曲目に歌われても最高だ。基本的にライブは夜に行われることが殆どなので、今「伝説の夜を」フラッドと過ごしてるんだなと思わせてくれる。これも大好きな曲。


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*1:cinema staffのボーカル三島君に指摘されていた